「質よりも量」が重要な社内コミュニケーション
前回の取材(*2)で、「怒りは第2次感情である。不満や不安などの第1次感情がガスのように充満しているところに、着火剤になるような出来事が起きたときに怒りが爆発する」と、安藤さんは「怒り」のプロセスを説明した。コロナ禍でリモートワークに切り替えた企業の多くが対面業務に戻しつつあるいまだからこそ、社内に溜まるガスもあるにちがいない。
*2 HRオンライン「“アンガーマネジメント”が、いま、企業の人事部に注目されているのはなぜか?」参照
安藤 基本的に、人は環境の変化に対して「怒り」を感じます。リモートワークが導入され、「出社せずに仕事なんかできるわけないだろう!」と怒っていた人が、いまは「なんで、出社する必要があるんだ?」と怒っています。いずれにせよ、慣れている習慣を変えなければならない状況に苛立っているわけで、「リモートワークに比べて、対面での業務のほうがストレスがかかる」ということではないでしょう。
コミュニケーションにおいて重要なのは、オンラインか対面かではなく、「質より量」です。「1週間に1回1時間、1on1を丁寧にやります」というよりも、1日5分でもムダ話をするほうがいい。時間の間隔が空いてしまうと、相手を理解しようと考える時間も、相手に考えてもらっていると感じる時間も少なくなります。そうすると、どうしても相手に対する疑心暗鬼が芽生えてしまうのです。時間を指定して行うオンラインでのコミュケーションよりも、すれ違いざまに雑談ができるような対面コミュニケーションのほうが、「質より量」という意味ではよいのではないかと私は思います。
「リモートワークから対面業務への移行という環境の変化で社員が苛立つ」と予測できるのであれば、管理職や人事部は対策を講じることができそうだ。
安藤 リモートワークを認める部分と、出社しなければならない部分が混在しているなら、その境界線を明示することです。社として、「リモートワークはすべて取りやめる」ということであれば、それをはっきり伝える必要があります。そして、理由も丁寧に伝えることが重要。「どっちでもいいよ」と社員に判断を委ねるのがいちばんいけません。