菅義偉が振り返る…沖縄の基地問題で「事態急変」のきっかけとなった2つの発言とは?2016年5月、首相官邸で会談に臨む沖縄県の翁長雄志知事(左)と安倍晋三首相(中央)、筆者(肩書はいずれも当時) Photo:SANKEI

沖縄県の基地負担軽減は、安倍政権でも最重要課題の一つだった。計画の頓挫を繰り返した沖縄の基地問題解決に向けた取り組みについて、全3回にわたって振り返る。本稿ではその第2回をお届けする(肩書はいずれも当時のもの)。(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

仲井眞・沖縄県知事の発言を巡り
沖縄県議会が紛糾

 2013年12月、安倍内閣は沖縄振興予算を21年度までの8年間、3000億円以上確保するという閣議決定を行った。

「いい正月になる」

 仲井眞弘多・沖縄県知事は破格の決定にこう述べた。予算の重要性をよく知る仲井眞知事の実感だったであろう。だがこのコメントを巡って14年の年明け早々、沖縄県議会が紛糾する。手厚い沖縄振興策と同時に、辺野古の埋め立てを承認していたためだ。

 そして、再選を狙った14年11月の県知事選挙で仲井眞氏は落選してしまう。同氏に代わって知事に就任した翁長雄志氏は「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、辺野古埋め立ての承認を取り消したため、国との間で裁判となった。

 16年12月、最高裁判所の判決において国の主張が全面的に認められたため、政府は自然環境や住民の生活環境にも最大限配慮しつつ、18年12月から埋め立て作業に着手した。だが、その後の軟弱地盤に対応する設計変更の申請を巡り、残念ながら、政府と沖縄県の間で訴訟となり、昨年末に国は県に代わって申請を承認した。

 住宅や学校などに囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の危険性を除去するには、辺野古への移設を進めなければならない。

 さらに普天間飛行場の全面返還を含む再編計画では、日米間で在沖縄米軍の一定部分をグアムなどへ移転することで合意している。実現すれば、約1万9000人の沖縄米軍のうち約9000人が国外に移動することになり、沖縄県にとって大きな負担軽減につながることも忘れてはならない。