地震や津波などの大災害が発生すると
「DMAT」などの医療チームが派遣
平常時に医療を受ける場合、患者は病院や診療所の窓口で被保険者証(紙の健康保険証やマイナ保険証)を提示し、年齢や所得に応じて決められている医療費の一部負担金を支払うことになっている。つまり、医療を受けるためには、被保険者証とお金が必要になる。
だが、突然の地震や津波からの避難は一刻を争うもので、身の回りの物を何も持ち出せないこともある。そのため、災害時には医療態勢も特別な対応が取られるが、大きく分けると次の2つの特徴がある。
◆避難所や救護所などでは、誰でも無料で医療を受けられる
◆被災者は、被保険者証や所持金がなくても医療機関を受診できる
まず、大きな災害が発生すると、DMAT(Disaster Medical Assistance Team)など、あらかじめ災害に備えて医師や看護師、薬剤師などで編成された医療チームが被災地に派遣される。
到着した災害医療チームは、避難所や救護所で応急的な処置や薬剤の投与を行ったり、道路の寸断などで孤立した地域で巡回診療を行ったりする。これらの医療行為は、「災害救助法」の下で行われており、対象になっている医療行為は、(1)診療、(2)薬剤・治療材料の支給、(3)処置・手術・その他の治療・施術、(4)病院や診療所への収容、(5)看護の5項目だ。
災害救助法による医療は、救護班が応急的に行うもので、かかった費用は国と地方自治体が負担することになっている。そのため、避難所や救護所などで、災害医療チームからケガの処置をしてもらったり、薬を出してもらったりしても、お金はかからない。被保険者証や所持金がなくても、被災者なら誰でも無料で医療を受けられるのだ。
このように、災害救助法による医療は、原則的に避難所や救護所などで行われたものが対象だ。ただし、発災直後の混乱期に、病院や診療所で応急的に行われた医療も災害救助法の対象となって、無料になることもある。