健康保険証を紛失しても
医療機関を受診できる

 災害時も診療を続けている病院や診療所、歯科診療所を受診する場合は、通常通りに健康保険を使って医療を受けることになる。だが、被災者は、健康保険を使って受ける医療にも特別な措置が取られる。

 前述のように、日常的に医療機関を受診する際は、被保険者証の提示と年齢や所得に応じた一部負担金の支払いが求められる。被保険者証は、その患者の公的医療保険の加入先などの資格情報を証明するもので、医療機関はこれを見て医療費を請求している。

 だが、災害時は被保険者証やお金を持ち出せなかったり、紛失してしまったりすることも考えられる。そのため、大きな災害が起こると、厚生労働省から通知が出され、被保険者証や所持金がなくても、被災者が医療機関を受診できるようにする特例措置が取られている。

 特に、今回はその被害の甚大さから、健康保険組合や医療機関などの関係各所に対して、1月11日付で「令和6年能登半島地震に伴う災害の被災者に係る保険医療機関等における一部負担金等の取扱いについて」という事務連絡が出されており、特例措置の徹底を呼びかけている。

 これによって、被災者が病院や診療所を受診する場合は、被保険者証を提示できなくても、氏名や生年月日、連絡先(電話番号等)、勤務先、加入している健康保険組合などを、口頭で伝えるだけで必要な医療が受けられる。また、1~3割の自己負担分についても、支払いの猶予が受けられるのだ。

 通知の文書では、自己負担分については「猶予」と表現されているが、東日本大震災や熊本地震など、過去の災害では実質的に「免除」されている。今回も、この特例の対象となった被災者は、無料で医療を受けられると考えてよいだろう。

 今回の能登半島地震で医療費の無料措置の対象となっているのは、次の(1)、(2)の要件を満たした人だ。

(1) 次のいずれかに該当する人
・災害救助法が適用された市町村の国民健康保険に加入している
・災害救助法が適用された市町村が所在する県の後期高齢者医療制度に加入している
・協会けんぽ、一部の健保組合、国保組合の加入者で、災害救助法が適用されている市町村に住所地がある

(2)次のいずれかの被害に遭った人
・住宅の全半壊、全半焼、床上浸水、またはこれに準ずる被災をした
・主たる生計維持者が死亡、または重篤な傷病を負った
・主たる生計維持者が行方不明になっている
・主たる生計維持者が業務を廃止、または休止した
・主たる生計維持者が失職し、現在収入がない

 上記の(1)、(2)の両方に当てはまれば、医療費免除の特例措置を受けることができる。自分が医療費免除の対象になるかどうかは、厚生労働省や各自治体のホームページでも調べられるので、通信環境がある人は調べてみよう。