富士通UKのガバナンス問題が
事態をややこしくしている
富士通にとって、これも経営陣が口にはしにくい話だと思いますが、事態をややこしくしているのは富士通UKのガバナンス問題です。富士通UKの母体はイギリスの大手IT企業であるICLという会社です。イギリスの国策IT企業だったのですが、赤字になったことで当時のサッチャー政権が身売りを考えます。
買収に名乗りを上げたのが富士通で、1990年にICLは富士通の子会社になったのです。その後富士通が単独株主になり、2002年に現在の社名に変更されています。
100%買収された子会社は法律や権利上は親会社の一部になるのですが、法人というものは親の言うことをよく聞く子会社ばかりではありません。中には資本だけ親が代わっただけで、本心では親の言うことなど聞く耳をもたないという子会社も世の中には普通に存在します。
私個人は、実は富士通とは直接の仕事関係はありません。ただ長らくIT業界のコンサルティングをしてきた関係で、M&A戦略の事例としての富士通のICL買収については情報として知っていることがたくさんあります。
ひとことで表現すれば、富士通UKは富士通本社のコントロールが及びづらい存在だったといえます。
経営陣としては、高度に政治的な問題になったこの事件を見守るほかはない状況だと考えられます。見守るとはいえ、富士通UKがスケープゴートにされるリスクはあるので、事態の推移については慎重に介入する必要があるとも思います。
一企業の問題を離れて国同士の政治問題にすらなりかねないという点では、政府も関心を持つべき事態でしょう。
それにしても冤罪事件全般についていつも思うのですが、被害者救済が難しいという点で世界共通の社会問題だと私は感じます。心の痛む事件です。