会計システムの欠陥によって、郵便局の窓口の現金とシステムが表示する残高に不整合が発生しました。しかし、当時は“郵便局長による横領ないしは不正経理が原因で不整合が起きた”と判断されたのです。その結果、2000年から2014年にかけて700人以上の郵便局長が訴追されました。
訴追された郵便局長たちは自分の財産から不足額を埋めさせられ、また一部の人たちは横領罪などで刑務所に収監されました。わかっているだけで自殺に追い込まれた人も4人います。
イギリスでは、政府が100%株式を保有するポスト・オフィスという会社が郵便局の仕組み全体を運営しています。そして地方の小さな郵便局は、個人事業主が経営しています。この事件は、刑事事件としては本社であるポスト・オフィスがフランチャイズオーナーである郵便局長を訴追した事件です。
2009年にはシステムの欠陥が原因の可能性があるという指摘が出ていたのですが、ポスト・オフィスはこれを否定して訴追が続きました。結局、2019年にイギリスの裁判所が残高不足はシステムの欠陥が原因だと認定するまでの間に事態が悪化し、現在は「イギリス史上最大の冤罪事件が生まれた」といわれているのです。