親が亡くなって実家を相続したのはいいが、すでに家を持つ自分が住む選択肢はない。しかし、子ども時代を過ごした思い出がいっぱいの建物を壊して更地にするのは忍びないと、借り手を探すオーナーは少なくない。そんな実家の空き家に国外から熱視線が向けられているという。近所の不動産業者に任せるだけではリーチできない、世界中のニーズをどう取り込めばよいのか。※本稿は、『今すぐ、実家を売りなさい 空き家2000万問題の衝撃』(光文社)の一部を抜粋したものです。
空き家への気持ちを吐き出し
ながら折り合いをつけよう
実家を10年放置していた所有者さんが、相談に訪れました。仮にAさんとしましょう。重い腰を上げて一歩踏み出してもなお、まだ内心モヤモヤしているようでした。すべてを打ち明けていただいていないような対話が、相談初期は続くのです。
言葉にはできなくても、所有者さんが前に進めない理由が、絶対にあるはずです。親を失い、相続したばかりの所有者さんや、高齢で先祖代々のご自宅の処理に悩む所有者さんは、自分が何にこだわりを持っているのかが分からないことも多いのです。
持ち家のことを好きに話してもらって、「なるほど、そうなんですね」と、ひたすら相槌を打つ。どんどん話してもらえるように背中を押すことが、迷っている人にしてあげられることなんです。
そこまでくれば、答えが見えてきます。その家にこだわりがあって、思いが残っているのであれば、その方の思いに沿うような方法を提案してあげるのです。「家をきれいにリフォームすれば、貸せますよ」「民泊でお客さんを泊めたら面白いですよ」などとご提案できます。
空き家を持っている人は、まず誰かと話しましょう。話をすることが大切なのです。大切なのは、「所有者さんの納得感」なのです。「これが自分で選んだ解決の道だ。これでよかったんだ」と、思える気持ちが大切なのです。
その後、先ほどのAさんは、実家を賃貸に出したいと希望されました。ここで大切だったのは、なぜ10年も空き家のままにしておいたかということです。
Aさんは、心の奥底では、できれば実家を残しておきたいと思われていたのです。自分は住めないけれど、可能ならば誰かに使ってもらいたい。「実家がそのままの姿で残っていること」が重要だったのです。
不動産業者に直接相談すると、営業や商売のうまさで、彼らの思惑に乗ってしまう所有者さんも多く存在します。もちろん、それで納得されていればまったく問題ありません。親身で信頼できる不動産事業者もたくさんいます。しかし、彼らの事業モデルを考えると、いかに安く仕入れて高く売るか、というのが経済の原理です。これは良し悪しではなく、経営をする上での「さだめ」です。