となると、すでに税制上価値のない古家を残して、工夫をこらして難しいリノベーションをするよりも、解体して更地にして、敷地が広ければ1軒だった場所に2軒の住宅を新築して売る方が、新築がいまだに人気で、土地に価値がついている日本では正攻法といえるかもしれません。手放すことが目的なら、それでもいいかもしれません。

 ですが、建物を残して近隣への顔を立てたり、地域に文化資源を残したいというような、建物への思いに蓋をしてしまった所有者さんも多いのです。更地になるくらいなら、手放さない、放置するという判断に逆戻りしたりもします。それでは元も子もありません。

 売るか貸すか。このAさんは、建物への思いを大切にし、貸す方向で話を進めています。10年間眠っていたままだったこの家も、きっと生き返ることでしょう。

ネット活用で物件をアピール
見込み客は世界中にいる

 売却あるいは貸すと決めた場合、地方の場合は都心ほど需要がないので、情報が広まるのに時間がかかったり、広く届かなかったりします。

 そんなとき、僕たち空き家活用株式会社では、YouTubeの「ええやん!空き家やんちゃんねる」で空き家内の様子を動画で撮影して流したり、流通プラットフォーム「アキカツナビ」を通して物件情報を公開したり、LINEに登録してくれているお客さまに配信するなど、どんどん情報を発信していきます。

 すると、その家のある地域エリアだけでなく、全国あるいは世界の方々からも問い合わせがきます。

「ええやん!空き家やんちゃんねる」を見てくれている人は45歳以上がほとんどで、もっとも多い年齢層は65歳以上です。きっと定年を迎えて自由になり、自分の実家をどうしようか考えあぐねている方々でしょう。

 興味深いのは、視聴者の10パーセントくらいが海外の人だということ。アメリカ、台湾、韓国、香港、タイあたりからも問い合わせがきます。スカンジナビア半島の国からもけっこうメールが届くんです。なぜかは分かりません。

 売る場合、どんな人に買ってもらいたいか、家をどういうかたちで使ってもらいたいのか、所有者さんの意思を尊重します。購入希望者に思いをありのまま伝えます。所有者さんの希望するような人に買ってもらえれば、近所の人も安心して歓迎しますし、所有者さんも周りに迷惑をかけずにすんだとホッとされます。これも、所有者さんの納得した答えとなります。