中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変あいりん地域からは昔の暗いイメージが消えつつある(著者撮影)

日本のインバウンドツーリズムは再び幕を開け、ビジネス上の人的交流も息を吹き返しつつある。ポストコロナに期待されるのは「外からの目線」を利用した日本の課題解決だ。外国からの人の流れと資本の参入は街をどう活性化させるのか。中国からの人と資本の動きに注目して、大阪・西成一帯の変化をリポートする。(ジャーナリスト 姫田小夏)

中国人の間で西成区が人気

 人口減少に悩まされる日本列島だが、大阪市で外国人居住者が増えている。2020年からのコロナ禍で減少傾向にあった外国人居住者が2022年12月末に15万2560人に達したのだ。

 中でも注目したいのが同市西成区だ。統計が確認できる1960年以降、西成区は右肩下がりの人口減少が続き、その食い止めが行政の大きな課題のひとつになっていた。ところが、2022年は微増に転じたのである。

 西成区の人口増加に貢献しているのが外国人居住者だ。2019年(9月末)には9525人だったが、コロナ禍にもかかわらず毎年その数は増え、2022年(9月末)には前年比で1563人増加し1万1696人になった。韓国・朝鮮籍(3422人)、ベトナム籍(3007人)に続くのが中国籍(2976人)の居住者だ。

 中国語の通訳ガイドを務める楢崎宣夫さんは、「西成区役所の住民登録などを行う窓口では、以前に比べてはるかに多くの中国人を目にするようになりました」と語る。早朝の西成区役所窓口を訪れた筆者も、順番待ちの中に何人かの中国人を目撃した。

 中国人が増えている背景には、いくつかの理由がある。その一つが中国からの“脱出”だ。大阪市に住む中国人の陳明さん(仮名)は「ここ数年で友人たちはみな、海外に出ていきました。ロックダウンで悲惨な目に遭った中国人は、なおさらこの国に居続けていいかを真剣に考えているのです」と明かす。

 陳さん自身はすでにコロナ前に日本で経営管理ビザを取得しており、2022年6月に中国から東京に戻ってきたが、住みやすさを理由に大阪に転居したという。在留の中国人の中には、あえて西成区を選んで居住する中国人もいる。現在、独立起業した趙雲さん(仮名)も大阪定住を選んだ一人だが、その魅力をこう語っている。

「西成は物価が安く、さまざまな国から来た人たちが住んでいる。私たちにとってはそういう場所が住みやすい。ここが好きな中国人は結構多いですよ」

 不動産情報サービスを手掛けるジープラスメディアによれば、2022年5月、「大阪で外国人が不動産を買いたい街」は、西成区が東大阪市を抜いて1位になった。