「筋違い」「独りよがり」「逆恨み」
街をさまよう「歩く凶器」たち

 同7日の第22回論告求刑公判の検察側論告、弁護側最終弁論は冒頭の通りだ。

 公判を通じて明らかになったのは、被告が自己愛と自意識が強いという傾向だ。「自分が不遇である」と認識するためには、悪者である別の第三者が必要である。そのために、検察が指摘した「他責的、攻撃的」な行動となる。

 自分の小説が落選した結果を受け入れられず「京アニが悪い」という思考に行き着き、アイデアを盗まれたという荒唐無稽なストーリーを「妄想癖」によって後付けされ思い込んだとすれば合点がいく。

 妄想を真実として信じ込んでいる以上、被告の理解では今も悪いのは京アニであり、自分を受け入れなかった社会のはずだ。被告のような思考回路であれば、京アニではなくても、いずれどこかで別の対象に刃を向けていただろう。

 事実、前述の通り、被告は事件前にもさいたま市の大宮駅で無差別殺傷事件を計画していた。過去にも「筋違い」「独りよがり」「逆恨み」が原因の似たような事件はあり、現実社会では「歩く凶器(狂気)」が普通に街をさまよっていることを示唆している。

 被告の妄想に巻き込まれ、犠牲となった36人の方々に心から哀悼の意を表します。