被害者遺族に初めて謝罪するも
小説盗用の持論を強弁

 同20日の第8回公判では、被害者参加制度を利用して遺族が質問。「(被害者に)家族や子どもがいると分かっていたか」の問いには「申し訳ありません。そこまで考えていなかった」と初めて謝罪を口にした。また犠牲者の母親が、被告が盗用されたと主張する作品の完成後の入社だったと指摘すると「すみません」と再び謝罪した。

 しかし「私はどんな罪でも受ける」としながら、小説を盗用されたとの持論を振りかざし「京アニが私にしたことは不問か」「(事件の)被害者というだけで良心の呵責はないのか」と強弁。遺族の質問に「逆に聞くが…」と問い返し、裁判長から「今、あなたは質問する立場ではない」とたしなめられる場面もあった。

 10月2日の第11回公判には京アニの八田英明社長が証人として出廷。犠牲者を「将来に夢を持つ人ばかりだった」と悼み、被告の小説は内容を審査する以前に選考から外れていたと説明した。

 同23日の第13回公判には精神鑑定した医師が出廷。計25回面談した結果、妄想性パーソナリティー障害があったと判断した。ただ動機については「性格傾向と小説の落選など現実世界での出来事がメイン」とし、妄想の影響は限定的とも証言。犯行を躊躇(ちゅうちょ)したのは善悪を区別できていたためで「正常な心理が働いていた」と説明した。

 同26日の第14回公判には起訴後に弁護側が依頼した医師が出廷。被告には12回面談し、約10年前から重度の妄想性障害があったと証言。「客観的には妄想に見えても、本人は妄想と思っていない」とした一方、動機には被告の性格傾向もあり「割合や数字では表せない」と説明した。