2023年の夏は全国各地で記録的な暑さとなった。世界気象機関(WMO)によると、12万年ぶりの暑さだという。ちまたでは例年にも増して気候変動や環境問題が取り沙汰され、国際連合は「地球温暖化」ではなく「地球沸騰化」というキーワードを使い始めた。そんな中で、地球沸騰化の解決策の一つとして世界的に注目を浴びているのが「ブルーカーボン」だ。今回は、同分野で日本最先端の取り組みを行う福岡県のとある自治体と漁協を追った。(穂座来萬大/5時から作家塾®)
新たな炭素供給源「ブルーカーボン」
地球温暖化が原因の「磯焼け」で危機
「ブルーカーボン」とは、09年に国連環境計画(UNEP)の報告書において発表された、ワカメやコンブといった海藻などの海洋生物によって吸収・貯留されている炭素のことを指す。炭素を吸収した海洋生物はCO2を海底に固定させる働きをするため、新たな炭素吸収源として期待されている。
森林や山林などが吸収・貯留した炭素「グリーンカーボン」と比較すると、年間で吸収できるブルーカーボンによる吸収量は約29億トン、一方でグリーンカーボンによる吸収量は19億トンと、より規模が大きい。
しかし、そのブルーカーボンを支える海藻類が今、危機を迎えている。地球温暖化を原因とする「磯焼け」が日本全国で深刻化しているのだ。
「磯焼け」は「海の砂漠化」とも呼ばれ、地球温暖化によって海水温が上昇した結果、ウニなどの海藻を食べる生物が活発化して増殖し、海藻類を食べ尽くしてしまって石灰質の生物が磯の海底にはびこる現象のことである。
「磯焼け」は1990年代にはその存在が認められていたが、海水温の上昇などに伴い今や日本全国各地で見られるようになった。水産庁が磯焼け対策全国協議会*1を設置するなど、国も対策に本腰だ。都道府県レベルでも対策が進められており、自治体だけでなく企業も連携して解決に向け動き出している。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/seibi/isoyaketaisakukyougikai.html