「金沢駅3時49分発、輪島駅7時11分着」
昔の時刻表から見る朝市のにぎわい

JR七尾線の車両。この車両は長らく能登半島を走り続けているJR七尾線の車両。この車両は長らく能登半島を走り続けている Photo by W.M.

 ここで、昔の鉄道時刻表(1982年版)から、当時の輪島朝市のにぎわいを思い浮かべてみよう。

 旧・国鉄七尾線(現在のJR七尾線、一部区間はのと鉄道)は、昭和40年代~50年代には、輪島で魚を買い付けて昼過ぎに金沢に戻る行商人のために、「金沢駅3時49分発、輪島駅7時11分着」という、とてつもなく早朝に出発する列車が運行されていたという。

 そして、この列車には大阪から来る急行「きたぐに」にも接続し、乗客には漆器を買い付ける業者も多かったという。さらに、8時台に輪島に到着する便は、東京・上野駅始発の寝台急行「北陸」、名古屋駅始発の夜行急行「のりくら」から乗り換えた人々であふれていたそうだ。「その時間には大口注文をする人や、百貨店のバイヤーさんもたまにお店をのぞきに来ていた。それはもう緊張したよ」(朝市通りの老舗店の店主)。

 しかし、早朝に到着する行商人やバイヤーは徐々に減少し、国道249号の整備とともに、クルマで輪島に来訪するようになったという。早朝の列車は消滅し、鉄道自体も2001年に廃止となっている。