頭の中にある考えや思い、情報などを的確に言葉にし、相手にわかりやすく伝えるスキル「言語化力」。仕事や人間関係をスムーズにするこの能力には「夢を叶いやすくする力」があるという。そう語るのは、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』の著者で、文章や話し方の専門家である山口拓朗氏だ。本記事では、言語化で夢を叶えるとはどういうことか、本書の内容をもとに解説する。(構成:神代裕子)
大谷翔平選手が高校時代に書いた、目標達成表とは
子どもの頃からの夢を着実に実現していることで有名な人といえば、大リーグで活躍する大谷翔平選手だ。
テレビや雑誌を通して、彼が高校生1年生のときに作成した目標達成表の話を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。
それは、9×9=計81個に細分化したマスに目標を書き込んだもののこと。大谷選手が中央のマスに書いた夢は「8球団からドラフト1位指名」だった。
その夢の実現に必要なこととして、彼はそのマスの周囲に「体づくり・人間性・メンタル・コントロール・キレ・スピード160km/h・変化球・運」と8個の目標を書き込んだ。
そして、それぞれの項目を中心に置いて、さらに「体づくりのために必要な8項目」「人間性を高めるために必要な8項目」と、どんどん具体化して書いていったのだ。
「8球団からドラフト1位指名」を実現するために必要なことを、具体化し、それをさらにもう一段噛み砕くことで、具体化な行動を洗い出していったわけだ。
言語化により脳が情報を引き寄せる
山口氏は、大谷選手がこの目標達成表を埋めた時に、「脳機能の”RAS(ラス)”が発動したはず」と語る。
脳機能の一つである「RAS」とは、意識している情報を「大事な情報」と判断し、積極的に脳に取り込んでいくことだ。
人は、目や耳などから入ってくる様々な情報を無意識のうちに取捨選択をしているが、「RAS」を活用することで、自分にとって必要性の高い言葉や情報を、集中的に集められるようになるのだという。
これは誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。
たとえば、「いずれ会社を辞めて起業したい」と考えるようになったとする。
そうすると、本屋に行けば起業に関する本が目につくし、YouTubeを見ていても、起業家として成功している人の動画が目に止まるようになる。
なんだか急に身の回りに起業の情報が溢れ出して、「見えない力が働いているのだろうか」なんて不思議に思う。そんな経験をしたことがある人もいるはずだ。
これが、「起業」を意識したことで「RAS」が発動した結果なのだろう。
夢を叶えるためには「具体化」が必須
山口氏は、大谷選手もこれと同じことが起きたのだろうと考えているわけだ。
このように、「夢を叶えるためには、夢の正体を明らかにすることが必須」と山口氏は指摘する。
夢を叶えるために具体化した目標を一つひとつ達成していくことで夢に近づくことができる。
また、具体化した夢や目標を人に伝えたりSNSで発信したりすることで、「それについて詳しい人を知っているよ」などと周囲の人から情報が集まってきたりもする。
そんなことが起こるのはすべて、「夢」という漠然としたものを、具体的なものに言語化して落とし込んでいくからなのだ。
あなたやあなたの人生を作り出しているものは「言葉」にほかなりません。(P.241)
言葉の力を借りて、夢を叶える
日本には、「言霊」という言葉がある。これは発した言葉が何らかの形で現実に影響を与えるという考え方だ。
しかし、「RAS」という脳の機能があると考えると、「言霊には現実に対する影響力がある」というのも同じ理屈と言えるだろう。
同じ言語化するなら、良いことや自分の夢を叶えるためのことを積極的に言語化していきたい。
もしあなたにも叶えたい夢があるなら、大谷選手を参考に、具体的に言語化してみてはいかがだろうか。
言葉の力を借りて、我々も夢を実現していきたいものである。