あなたの周りに「仕事ができて、周囲の人からの評価も高い」という人がいないだろうか? そういった人が共通して持っている能力の一つに「言語化力」がある。言語化力があると、自分の考えや気持ちを上手に人に伝えられるため、仕事も人間関係も円滑に進むのだ。
では一体、どうすれば言語化力が身につくのだろうか。文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏の著書『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』には、そのための方法が紹介されている。本記事では、本書の内容をもとに、言語化力アップのために特に重要な具体化力について紹介する。(構成:神代裕子)

言語化大全Photo: Adobe Stock

“デキる人”は言語化がうまい

 あなたは、「自分の気持ちや考えをうまく言葉にできない」と悩んだことはないだろうか?

 うまく伝えられないことで、コミュニケーションで誤解が生じてしまったり、自分の気持ちを抑え込む羽目に陥ってしまったりといったことも起こり得るものだ。

 また、一生懸命考えた企画があったとしても、上司にうまく説明できなければなかなか採用してもらえない。

 企画意図をうまく伝えられず、「結局何が言いたいの?」と言われてしまった経験がある人もいるはずだ。

 このように、自分の考えや思いを言語化できるかどうかは、仕事や人間関係を円滑に進める上では非常に重要な能力と言える。

 本書の著者である山口拓朗氏は少し厳しく言えば、「言語化できない人は、何も考えていない人と同じ」と指摘する。

どんなに素晴らしい考えや発想が頭の中に浮かんでも、それを言語化し、相手にきちんと伝えることができなければ意味がありません。(P.2)

 反対に、言語化力があれば、仕事や企画が評価され、仕事がはかどり、良好な人間関係を構築でき、自信を持って毎日を過ごすことができるという。いいことだらけだ。

 確かに、「仕事ができる」と言われている人は、上手に言語化して、物事をスムーズに進めている人が多い。

 では、言語化力はどのように身につけたら良いのだろうか。

言語化力を上げるために必要な3つの力

 そもそも言語化力とは何か。山口氏は次のように定義している。

【本書の定義:言語化力】
頭の中にある考えや思い、情報などを的確に言葉にし、相手にわかりやすく伝える力のこと。(P.16)

 さらに、この言語化力を上げるために必要な力として、「語彙力」「具体化力」「伝達力」の3つを挙げている。

 この3つのどれかが弱いと、相手にわかりやすく伝えることができないという。

 たとえば、「語彙力」だけ高くてもうまく伝わらない。たくさんの言葉をむやみに人に投げかけても、相手は上手に受け取ることができないからだ。

 逆に、「伝達力」だけを磨いても、中身がきちんと整理されていなければ意味がない。中身がないままに言い方や表現だけを変えても、相手は何のことだかよくわからないからだ。

 中でも、「具体化力」は重要で、山口氏は「『何を伝えるか』の『何』の部分」と語る。

具のない味噌汁が味気ないのと同じように、言語化でも「具(体)」が重要なのです。(P.20)

具体化が弱いと、相手にうまく伝わらない

 山口氏は、「具体化とは言葉の解像度を上げること」と解説する。

解像度というのは、もともとは、ディスプレイや画像において、画素やドットの「密度」を示す指標のことです。
「解像度が低い=密度が低い」と、画像はガタつき粗くなり、不明瞭になります。
逆に「解像度が高い=密度が高い」と、細部までくっきりと見える、鮮明な画像になるわけです。(P.74)

 これと似たようなことが、言語化でも起きているというのだ。

 解像度が低いと、次のような状態になってしまう。

・不明瞭(不鮮明)
・誤解されやすい
・具体性がなく、具体例も少ない
・(話が見えず)ストレスがある
・頭の中が整理されていない
・選択肢が少ない(=選択・判断・行動ができない)
・論理が崩れやすい(筋道が立ちにくい)
・周りにシェアしにくい
(P.75)

 解像度が高ければ反対になるので、内容が明瞭で誤解されにくく、具体例もあってストレスなく聞ける……という状態になるわけだ。

 その結果、「自分が伝えたいことと、相手が受け取ることのズレが減り、コミュニケーションにおける誤解が生まれにくくなる」という。

 一方で、言語化をうまくできない人は、「伝え方」が下手なのではなく、そもそも「伝える情報がイメージできていない」と山口氏は指摘する。

 どんなに伝え方のテクニックを学んでも、そもそも何を伝えたいのかがはっきりしていなければ、相手に伝わらないのも当然だ。

具体化力をアップする2つの方法

 では、物事を具体化するにはどうしたらいいか。

 本書で山口氏が挙げている方法を2つ紹介しよう。

●「事実」はまず「5W3H」で具体化する
 「5W3H」とは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「How many(どのくらい)」「How much(いくら)」のこと。

 これらをしっかり押さえておけば、上司への報告の際や、サービスや商品の案内などで情報が漏れることがなくなるだろう。

●「なぜ→たとえば」メソッドで具体化する
 言いたいことがあっても「面白かった」「すごかった」といったざっくりした意見や感想しか出てこない場合は、「なぜ?」と「たとえば?」を使って自問自答することで、意見や考えを具体化していくことができる。

 まずはざっくり一言、「面白かった」などと意見の方向性をとりあえず出す。その後、「なぜ面白かったのか?」とその理由を考える。その理由に対して、「たとえば?」とさらに理由や事例などを挙げていくと、思考を深めていくことができるのだ。

具体化力を身につけて、上手に言語化を

 チャットなどの短いテキストコミュニケーションが増えた現代において、私たちは意識しなければ端的な言葉でやり取りを終わらせてしまう傾向にある。

 しかし、それではビジネスシーンでクライアントや上司、同僚、部下などに自分の考えをわかりやすく伝えることはできない。

 今あなたが「なかなか思ったことが相手に伝わっていないなあ」と感じているのなら、もしかしたら具体化が足りていないのかもしれない。

 仕事でしっかりと結果を出すためにも、周りの人とのコミュニケーションを円滑にするためにも、具体化力を身につけて言語化することを意識してみてほしい。