「いい写真とはなにか」を
先に知っておいたほうがいい

 カメラを持ってるときにどれくらい写真とカメラ以外の話ができるかを考えましょう。写真の本やYouTubeから学ばないほうがいいです。デザイナーや編集者や写真キュレーターみたいな写真を扱う職業の方々も写真家もアシスタントだって、初心者向けの写真の本やYouTubeをオススメする人っていないと思うんです。

 写真に大切なのは写真以外の知識と経験です。写真を写真から学ぶよりも映画や漫画から学んだほうがいいです。人生に大切なことだって、だいたい映画や漫画に描かれているじゃないですか。写真も一緒。

 写真がうまくなった先にあるのは「いい写真だろうか?」ってことです。だったら写真がうまくなる前に「いい写真とはなんだろう?」って考えたほうがいいです。うまい写真=いい写真って誤解している人はここでゴールです。

 これから写真をはじめる人になによりオススメしたい漫画があります。井上雄彦さんの『バガボンド』です。必修といってもいいぐらい。

『バガボンド』は宮本武蔵の話です。若い武蔵は強くなりたい強くなりたいと願い、村を飛びでて戦にでたり道場破りをします。剣豪みたいな人と戦うんですが、武蔵は最初っから充分すぎるほど強いんですね。バッタバッタと人を斬ります。

 いつしか武蔵は強いってことは、剣が強いってことではないと気づくんです。ある村で女性たちに剣を教えてくれと頼まれるのですが、奇声や大声をあげたりして剣を振るうような教え方ではなく、力抜いてテキトーに振りましょうって教えるだけなんです。

 ぼくは写真もおなじことだと思うんです。強くなりたいは写真がうまくなりたいと一緒。写真がうまくなった先に、写真がうまいってのは写真がいいってことじゃないんだって気づきます。

 露出や構図を勉強したり、いわゆる写真がうまくなる勉強はあるのかもしれないけど、うまくなった気になるだけだと思うんです。そういう勉強は調べればすぐにわかるし、そんなに大変な勉強でもないので、うまさの先を考えることが大切だと思います。