偶然ですよ。だけど偶然でも1枚はヒットが出るの。目をつぶって撮っても1枚は偶然に当たる。ぼくはこれを3%の偶然と呼んでいる。ざっくり3%なんだけど、偶然でヒットが出るのが写真だ。

 ぼくは18歳から写真をはじめていま40歳だ。「3%の偶然」を才能と信じて勉強をしてプロになった。ぼくの現在の打率はせいぜい1割。10%ぐらい。天才はもっとすごいんじゃないかな。ぼくはバカよりの凡人なので100枚撮ったら10枚ぐらいのいい感じの写真がある。

 なのでぼくは100枚じゃなくて1000枚撮る。そうするといい感じの写真は100枚になる。100枚のヒットから10枚のホームランを見つける。そうやって写真の質を保つ。写真の質は量から生まれる。

 写真がどんなにダメな人でも30枚撮れば1枚はいい感じの写真が出るのに、苦手意識から20枚……10枚と撮る枚数がどんどん減っていく。打率が低いのにバットを振る回数まで減らせばヒットが出るわけないでしょう。

 1枚撮って終わりみたいなことをしててもヒットは出ません。ヒットが出ないから写真がおもしろくなりません。だから決定的な原因は撮る枚数が少ないこと。撮るんだよ、撮るの。撮れ。グダグダいってないで撮れ。グダグダいってる時間で撮れ。撮れないならせめてグダグダいわない。

 自信がないから撮らないんじゃないんだよ、自信がないから撮るんだよ。写真の質は量から生まれる。「いい感じ」のハードルも上がっていくので、打率はあまり上がらない。18歳の頃のぼくがいまのぼくの写真を見たら打率10割って勘違いすると思う。

 写真は玉子焼きと一緒だ。誰だってはじめて玉子焼きを作ったときは失敗するんだけど、次に作るときはちょっと上手になる。はじめての玉子焼きと101回目の玉子焼きの出来上がりは違う。

 写真もたくさん撮らないと上達しない。そのためには常にカメラを持ち歩く必要がある。旅行に行ったときも職場や学校に行くときも、コンビニへ買い物に行くときも持ちあるく。日常のなかでおもわず見たものを撮ればいいだけ。