「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

地球上で最も観光客が訪れる国、フランス。どの街を訪れても均整の取れた美しい街並みに感嘆し、その土地のおいしいワインと郷土料理に魅了される。観光地選びには事欠かないフランスだが、ホテル選びとなると満足できるものを見つけるのは簡単ではない。ツール・ド・フランス取材歴30年、累計900泊超の滞在歴を持つスポーツジャーナリストが「フランスの絶景や文化を堪能できるホテル」を紹介する。(文/山口和幸)

1.雲海を見下ろす天文台で絶景ディナーを満喫

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi
Une nuit au sommet(ニュイ・オ・ソメ)
・シングルルーム 1泊2食付き 469ユーロ(約7万5000円)/ ダブルルーム12室で料金は2食付き519ユーロ(1ユーロ160円で約8万3000円)
※フランスでは1泊/1人につき100円程度の滞在税が別途必要(以下同様)

 針のような稜線のピークに建造された石造りの天文観測所、ピック・デュ・ミディ天文台は146年前に建設された。スペインと接するピレネー山脈のど真ん中にあって、その標高はなんと2877m。

 自転車レースのツール・ド・フランスが毎年通過するツールマレー峠さえ眼下に見下ろす。ふもとにあるラ・モンジーというスキーリゾートからテレキャビン(ロープウェイ)を2つ乗り継いでいく。まずはラ・モンジーのオフィス・デュ・ツーリズム(観光案内所)を訪ねると、「ニュイ・オ・ソメ=頂上の夜」という窓口があって、ネックストラップとIDカードを渡され、テレキャビンに乗り込むように案内される。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 頂上に到着すると、そこはもう天文台だ。施設管理スタッフから磁気カードを渡される。すべてのドアが電磁ロックなので、真夜中でもそのカギで開けられるところは歩き回ってもいいみたいだ。

 部屋は歴代の天文学者が使用していた質素なものだというが、内装はリノベーション済み。きれいな洗面器の蛇口をひねるとお湯が出る。オイルヒーターで室温は20度に調整されている。トイレとシャワーは共同だが、これもピカピカだった。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 午後6時半にこの日の宿泊者が集められ、天文研究員が施設を案内してくれる。ゾロゾロと着いていくと最後はレストランに到着。ルパ(晩餐)の用意が整っていた。

 単独参加は私だけだったが、遠方からの来訪者を気にかけてくれて、テーブルも足もとまでガラス張りで断崖絶壁がストーンと見下ろせる特等席だった。地元鴨肉やフォアグラ、牛や豚肉を地元の伝統的な味付けをしたものが出てきて、テーブルにハーフボトルも。

 最後のデザートともに1/4サイズのシャンパンボトルが出てきたので、これを持ってテラスに出て楽しむんだなと思った。

 すでにふもとまでの最終のテレキャビンは出発しているので、残っているのは宿泊者とスタッフだけだ。ちょうど夕日が沈むところだった。あたりは一気に暗くなる。訪れたのは7月だったが、真冬の格好が必要だ。

 

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 研究員が宿泊者を午後9時10分に再集合させ、研究施設見学ツアーが始まった。ドーム型の屋根が開放され、観測用の巨大望遠鏡を覗かせてくれる。そこから目撃した土星の輪は驚くほど鮮明だった。

 宿泊者数は1日につき27人限定だが、予約すればだれでも泊まれる。さすが世界随一の観光大国。日本ではあり得ないスケールの体験。フランスという国の底力を感じた。