7.抜群の安定感とお手頃な価格が嬉しい「チェーン展開のホテル」

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi
Premiere Classe(プルミエールクラス)
・シングルユース1泊60〜120ユーロ(9600〜1万9200円)

 クルマで旅している私にとって一番気軽なのはアコーグループやルーブルホテルズなどのチェーン系ホテルだ。フランスは郊外の高速インターチェンジ周辺に、サントルオテリエ(centre hôtelier)と呼ばれるホテル群があり、無料駐車場を備えた各社のチェーンホテルが軒を連ねる。運がよければサンドルコメルシアル(centre commercial=大規模ショッピングモール)が隣接されているので、カフェテリアで夕食を取ればレストランの1/4ほどで済む。

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 グレードの低いホテルにもいいところがある。支払いは前金で、磁気カードか暗証番号がプリントされた紙を渡されるので、チェックアウト時はそのままホテルをあとにするだけ。チェックイン時は、午後9時を過ぎると無人となるが、予約番号・名前・クレジットカード番号などをマシンに打ち込めば自分の予約した部屋に入れる。

 アコーグループならイビスバジェットやホテルF1、ルーブルホテルズならプルミエールクラスなどがリーズナブルな宿泊施設。フランス取材は夕方まで仕事に追われ、翌日には次の町に向かうという生活なので、プールなどの娯楽施設があっても使う時間がない。快適に眠れればいいので、これらのホテルが旅のベースになり、たまに刺激のある民宿、奮発してオーベルジュを加えている。

8.“地上の楽園”は一つじゃなかった!本物のリゾート体験を味わえる「民泊」

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Chalet Les Frenes(シャレ・レ・フレンヌ)
・2泊以上の予約が必要、2泊136ユーロ(2万1760円)

 アルプス地方のモンブラン直下の民泊へ。トイレとシャワーは共同だが、わが家のようにキッチンの冷蔵庫を使ったり、芝生の真ん中にある板張りのテラスでチェアに座って屹立した山岳をながめたりできる。

 窓からは夏でも冠雪した山岳が間近に見えて、「あれがモンブランか」とときめいてSNSに画像をアップしてしまったが、念のためオーナーに確認してみると、「モンブランはあの山の影に隠れて見えないよ」とつたない返事だった。

 朝食は午前8時くらいにダイニングに座っていると、フレークを含めた朝ごはんが始まるといったスタイルだった。卵料理は必ず目玉焼きで、それでもおいしかった。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 ツール・ド・フランス期間中、23日間でフランスを一周する旅は猛暑のプロバンスや風の強い北海にも足を運ぶ。でも毎年2〜3日ほど訪れるアルプスは地上の楽園とさえ感じるほど気持ちいい。これが本物のリゾートなんだとつくづく思う。

 チェアに座って、乾いた風を感じながらアルプスをながめていると、これまでの苦労をつくづく思い返した。大変なことも多かったが、気持ちいい空気に包まれながら大自然の中にたたずんでいるとすべてが報われる気がした。

9.二度と訪れないであろう田舎町の「バーホテル」とケバブ

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Bar Hotel du Centre(バーロテル・デュ・サントル)
・シングルユース1泊の価格60ユーロ(9600円)

 フランス北東部、モントルベルアンブレス。日本人が訪ねることもないだろう小さな田舎町の宿はバーの2階。それでもなぜか落ち着ける雰囲気で、部屋もきれいなので居心地はいい。夜遅くまでにぎわっていたバーも深夜には酔客が散会したこと、部屋そのものが気持ちよかったことも幸いして安眠できた。

 いわゆるバーホテルという形態だ。飲みものは豊富にあるが、本格的な食事はできないので、その町のレストランに食べに出かけることになる。田舎町だと飲食店数は限られていて、しかも観光地とは異なり日曜日には営業していない店も多い。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 こういったときの救世主は宗教違いの人たちが営むケバブ店だ。田舎町でも需要があるのか、探せばたいていは見つかる。同様にピザ店も日曜日に営業しているところが多く、小さな町にも必ずある。ということでこの旅で1回は食べておきたかったケバブ店でテイクアウト。宗教面からアルコールは販売していないが、10ユーロ(1600円)以下で夕食が取れるので安心だ。

 ケバブ店を出るときにポイントカードまでもらった。スタンプを10個集めると無料になるらしいが、旅の途中でたどり着いたこの町には二度と訪れないような気がする。

10.流行りのグランピングを格安で!でも...

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi
Les Chalets du Haut-forez(レシャレ・デュ・オーフォレ)
・シングルユース1泊の価格52ユーロ(8320円)

 割高なホテルばかりのサンテティエンヌでは、直前にホテル予約サイトで52ユーロ(8320円)という料金にひかれた宿泊施設へ。管理人から事前にチェックイン指示がしきりにメールで届いていたのだが、実際に現地に行ってみると、さすがにこれはホテルとは違うことにようやく気づいた。

 レセプションに若い男性がいて、「部屋までは未舗装路なので手押し車に荷物を載せて引いていけ」という。その男性が予約した施設まで連れていってくれたが、最後はまさかの茂みをかき分けて…。小さなツインユースの小屋だった。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 ひと目見て、ちょっと動揺してしまったが、中はとても清潔で一夜くらいは過ごせそうだった。「これはグランピングのたぐいか」とも思ったが、モノはいいようで単なるキャンプ小屋だ。

 こんな宿に泊まったりするから「ゆる〜いバカンス」だと言われるのか。こちらとしてはビジネス旅行のつもりなのだが。しかも好きで泊まるんじゃなくて、予算を考えるとここしかなかったのだ。