2.「天空の城ラピュタ」の舞台でミシュラン2つ星を堪能

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi
Hostellerie du Vieux Cordes(オステリエ・デュ・ビューコルド)
・価格は季節・曜日によって異なるので、要問い合わせ

 フランスにはオーベルジュと呼ばれる伝統的なホテルが点在している。日本語に訳せば旅籠という言葉がピッタリだ。

 地元食材を使った料理が自慢のレストランが必ず併設されている。庶民的な価格で宿泊できるところも多いが、宿泊予約サイトで部屋を確保してホテルに到着してみると玄関ドアにミシュランのステッカーが貼ってあるなんてことは何回も体験している。今回もミシュラン2つ星のレストランをホテルがかかえていた。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 フランス中南部、街全体が世界遺産というアルビで仕事をすませ、コルドシュールシエル(Cordes-sur-Ciel)という村を目指した。ここはフランスでも人気のある村で、その景観から「天空の城」と呼ばれ、実際にアニメ「天空の城ラピュタ」のモデルになったとも言われる。河川によって四方をえぐられた小高い丘に石造りの道と集落が作られ、その真ん中にオステリエ・デュ・ビューコルド(Hostellerie du Vieux Cordes)があった。

 石畳の急坂をクルマで上り、城門をくぐってホテル前の狭い道に乗りつけて荷物を降ろすと、集落の端にある駐車スペースにクルマをまわすように案内された。それほどこの町はこぢんまりとしていて、ネコが石畳でのんびりと昼寝をしている。クルマなんてめったに走らないのである。

 フロントの奥に中庭があるのだが、樹齢300年の藤(ウィステリア)が屋根のように天井を覆い、夏でもしっとりとしている。ここが朝食会場で、シェフをはじめとした料理人が働く厨房が窓越しにうかがえる。古城のような、それでいて真新しい石造りのらせん階段を使って部屋まで上がる。

「行かずに死ねないフランスのホテル」10選、取材歴30年で900泊したジャーナリストがたどり着いた答えとは?Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 最高なのは丘陵地が見渡せるテラスにあるディナーテーブルだ(現在は改装されて建物内にテーブルが配置される)。絶景を見ながらミシュラン掲載の料理をいただく。フランスではムニュ(menu)と呼ばれる前菜・メイン・デザートの定食を頼むのがてっとり早く、このレストランには23ユーロ(3680円)と39ユーロ(6240円)が用意されている。

 天空の城の全容を目撃するために、谷の向こうにある尾根の上まで歩くことをおすすめしたい。日没時と翌朝にそれぞれ1時間かけて向かいの尾根に立ってみたが、おもわず仁王立ちして「地上の楽園を見たぞ!」と叫びたくなるほど壮観だった。