東京で10番目の都市型酒蔵が挑む、新たな日本酒の未来像
東京で10番目となる酒蔵が、2023年にJR八王子駅から徒歩5分の料亭内に誕生した。その昔、甲州街道の宿場町として栄えた八王子は、織物産業で興隆。花街が生まれ、芸妓さんは200人というにぎわいを見せた。その面影を残す中町の黒塀通りに面した料亭すゞ香の厨房を改装し、開業したのが東京八王子酒造だ。手掛けたのは八王子で生まれ育った西仲鎌司さん。酒類販売を営む家に生まれ「いつかは少量でも、自ら手掛けた酒を売りたい」と願い続けた。「昔の八王子は米どころで、最盛期には酒蔵が20軒以上もありました。東京五輪の開催までに酒蔵を造り、八王子で酒を飲んでもらいたい」と、13年に地元産米で醸す地酒蔵を計画。酒造りは米作りからと、農家を紹介してもらい酒米作りもスタート。田んぼに囲まれた田園酒蔵を設計したが、竣工直前にコロナ禍が襲う。五輪の開催は延期になり、酒を取り巻く状況も一変。計画は白紙に戻る。