部下の「ネット頼り」や「反応の鈍さ」にイライラする上司は多いが、これは間違い。上司がやるべきは、スマホだけでは得ることのできない考え方を教えたり、たとえ反応が薄くても若手への声かけをやめないことなのだ。※本稿は、伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
部下を「厳しさ」で
動かすのはもう時代遅れ
「ビシバシ厳しくやってください!」
これは、私が若手社員を対象とした研修をする際に、管理職の方からよく言われる言葉です。
また、入社から1カ月未満の新入社員に対して、管理職の方から「まだ学生気分が抜けていないから、ビシッとお願いします」などという言葉も聞かれます。
これらは、多くの上司や先輩が「人は厳しくしないと一人前に育たない」という固定観念にとらわれていることに原因があります。自分たちがそうやって育てられてきた、そんな扱いしか受けてこなかったからそう思い込んでいるだけであり、そこから脱却する必要があります。
もちろん、仕事を通してお客様の期待を超えた商品やサービスを提供し、継続的に買ってもらうことは容易ではありません。そのためには、1人ひとりが仕事においてさまざまな責任や義務を果たすことが必要です。しかし、若手社員にその大切さを教えることと、彼らを厳しく扱うことには何の関係もないことに気づかなければなりません。
仕事は楽しいことやうれしいことだけではありません。緊迫感を持って業務に集中しなければならない時間も多くありますし、ミスや失敗をしてつらく厳しい瞬間を経験することもあるでしょう。しかし、つらさや厳しさの乗り越え方は、実際につらく厳しい状況に遭遇したときにしか、上司や先輩が教えることも、若手が学ぶこともできません。
何より、上司や先輩はやり遂げることで得られる仕事の喜びや楽しさを若手に伝える役割があることを自覚してください。
だからこそ、上司や先輩は若手社員が自ら選択して就いた仕事が好きになるようなお手本として、品性のある大人の立ち振る舞いを体現しなければならないのです。
「何でもネットで調べるな」と
頭ごなしに否定してはいけない
若手社員と上司の世代間のギャップで最も影響が大きいのがネットとスマホです。それらにより若手社員のコミュニケーションのとり方やライフスタイル、価値観までが大きく変化してきています。
上司の世代は、学生時代の終わり頃か社会人になってからネットが一般に普及してきて、スマホを手にする頃にはすっかり大人になっていたはずです。