当時声優の仕事は「声」の仕事という風潮が強かったのですが、僕らとしては声優には「身体を動かす演技」を積極的に学ばせたいという意図もあり、小倉唯、石原夏織らをモーションアクターとして投入しました。
そして『初音ミク -Project DIVA-』の発売プロモーション、僕ら的にはまだ新人で名前の知られていない小倉唯をみなさんに知っていただく機会として「小倉唯で『踊ってみた』をやろう」という話になり、ニコニコ動画で2023年現在260万再生を超える『【小倉唯】「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」を踊ってみた』の発表に繋がったのです。
そうした経験を積ませていたことで、『kiss × sis』のEDで3DCGキャラクターを使ってダンス映像を作るためのリファレンス動画(人間が実際にダンスをし、その映像をもとにしてCGキャラクターに動きをつけて行くための参照動画)を、『ゆいかおり』のふたりで撮影することができました。
当時僕らは、将来、声優がモーションキャプチャをすることが普通になる時代が来る、いや、そうしなければ!という強い信念を持って臨んでいたので、これは絶好のチャンスでした。あの頃は誰も理解してくれませんでしたが、いまやすっかりそういう時代になりました。
そういったことに協力できたこともあり、『ゆいかおり』のメジャーデビューは、自分のなかで最初の集大成のような感覚がありました。
ワーナーとランティスとの縁から
小倉唯のソロデビューが拓けていく
そうしてアニメやゲームの仕事もやるようになり、小倉唯、石原夏織はキャリアを順調に進めていきましたが、ただ、この時点ではCDの売上の数字はまだまだの状態でした。
大きな変化が生まれたのは、「声優として音楽活動をすると、こんな世界があるよ」と体感してもらうために、水樹奈々さんや田村ゆかりさんのコンサートに連れていったときです。