深く広大な知識の海へ――著者より
私は外科医として、毎日のように手術に携わり、生きた臓器に触れている。
お腹をメスで切り開くと、そこには自然界が生み出した美しく複雑な構造物が横たわっている。臓器の様子は、人によって全く違う。黄色い内臓脂肪が分厚く臓器を覆っている人もいれば、内臓脂肪が白っぽくて薄い人もいる。胃が大きく足側に伸びている人もいれば、上方にとどまる人もいる。大腸が蛇のようにお腹の中にとぐろを巻いている人もいれば、比較的短くストレートな人もいる。
一見すると不思議に思えるが、考えてみれば当たり前のことだ。人によって、背丈や顔のつくり、性格は全く違う。それと同様に、臓器の様子にも個人差があるのだ。
医学はこれまで長い年月をかけて、臓器一つ一つの構造と機能を明らかにしてきた。それぞれの臓器が、なぜそのような形態であり、なぜそのような働きを持つのか。
医学が解明してきた謎について知ると、自然界が生み出した人体という精緻な構造物に、誰もが畏敬の念を抱くはずだ。
私は、医師として日々人体に触れ、その美しさを実感している。一方で私は、日々の手術を行う中で、現代医療の凄まじい進歩をも、この手で体感している。
私たちは今や、痛みを感じることなく手術を受け、短期間で元の生活に戻ることができる。かつての人たちが想像すらしなかった未来を、私たちは生きているのだ。医学がこれまで何を達成し、どのような治療を生み出してきたのか。この途方もない医学の進歩を知れば、誰もが驚嘆するはずだ。
医学を学び、自らの体について知ることは、途方もなく楽しい営みだ。 私が医学生の頃から約二十年間、絶えず味わってきた知的好奇心を満たす喜びを、多くの人に伝えたい。本書はそんな思いで執筆した。
本書で語る一つ一つのエピソードは、誰もがよく知る身近な話題から始まるが、奥に続く知識の海は深く広大だ。本書を読めば、「医学」という学問を、まるで高台から俯瞰するような心地良さを味わえるだろう。
それでは、いよいよ出発だ。すばらしい医学の世界へ。
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「気づけば読みふけってしまった。“よく知っていたはずの自分の体について実は何も知らなかった”という番狂わせに快感神経が刺激されまくるから」
2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は1000万超のページビューを記録。時事メディカル、ダイヤモンド・オンラインなどのウェブメディアで連載。Twitter(外科医けいゆう)アカウント、フォロワー約10万人。著書に18万部のベストセラー『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)、『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎)、『もったいない患者対応』(じほう)、新刊に『すばらしい医学』(ダイヤモンド社)ほか多数。
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