豪華絢爛、文豪たちの筆が
織りなす怪談アンソロジー

『死 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション』(汐文社)
編・註釈/東雅夫 絵/玉川麻衣

 この絢爛たる怪奇と恐怖のセレクションは、2017年3月に第一期『夢』『獣』『恋』『呪』『霊』の全5巻が出揃い、昨年7月に第二期の『影』が、今年(※編集部注/2019年)3月に『厠』と『死』が刊行されて第2期全3巻が完結した。8巻という末広がりの巻数になったところだし、平成から新たな元号・令和の時代にも3期、4期と続きますようにと期待を込めて、このタイミングでご紹介させていただきます。

 総ルビ、懇切丁寧な注釈と著者プロフィール付きで、仕様こそ確かにジュニア向きではあるが、内容は大人の活字好きの方々をも唸らせる充実ぶりだ。芥川龍之介、泉鏡花、川端康成、太宰治、谷崎潤一郎、夏目漱石、林芙美子、火野葦平、宮沢賢治──と収録作家を列記していけば、国語の教科書?と思うかもしれない。しかし、これらのまごうことなき文豪の作品でも、この8巻に採られているものを小中学校の国語の授業で読んだ覚えのある方はまずおられないと思う。これに内田百間(間は正しくは旧字)、江戸川乱歩、澁澤龍彦(彦は正しくは旧字)、日影丈吉、大坪砂男と続けば、このラインの愛好家は編者の眼差しの向くところに「なるほど」と膝を打つ。

 小川未明、松谷みよ子という児童文学の巨星はコンセプトの核だし、『恐怖対談』というユニークな対談集があるほどの恐怖譚愛好家だった吉行淳之介、実は空飛ぶ円盤に強い興味を抱いていたという意外な一面を持つ三島由紀夫の収録作は、これまでのイメージをひるがえす新鮮な驚きを生むことだろう。ネット上で一時期「予言的な文言が含まれている」と話題になった西條八十の『トミノの地獄』をまるごと注釈付きで読めるのも嬉しい。

 怪談は、人が何を求め、何に憧れ、何を夢見ているのかを、暗黒の鏡像として露わに映し出す。願わくば、このセレクションを全ての学校図書室に!柔らかな魂の成長に、必ず寄与してくれるはずである。