楽天の「独立維持」をかなえられる重要人物は
サイバーエージェントの藤田晋社長かもしれない

 では、その楽天の未来を誰が左右することになるのでしょうか? オーナーの三木谷社長なのか、伊藤忠、三菱商事、KDDI、みずほFGの誰かなのか? 力関係でそれが決まるのか、それとも三木谷社長が腹をくくって決まるのか? いったい誰が鍵を握るのでしょうか?

 そういったすべての情勢を考えるとこの問題にはもうひとり、重要なキーパーソンが隠れているかもしれません。せっかくの未来予測記事なので、そこまで予測してみましょう。

 それは資金繰りの窮地にあった楽天に100億円を出資した、サイバーエージェントの藤田晋社長です。

 サイバーエージェントが楽天に出資をしたのは昨年5月の第三者割当増資が初めてです。100億円の出資というのは巨額な出資である一方で、すでに外形が巨大企業になっている楽天に新規で100億円を投資しても株主としては大した出資比率にはなりません。

 では、藤田社長がなぜ楽天に出資をしたのかというと、これは業界の強いうわさですが20年前に三木谷社長から受けた恩を返すための「漢気(おとこぎ)出資」だったのだと言われているのです。

 実はサイバーエージェントは、上場直後の2000年に会社乗っ取りの危機にありました。資本政策を誤った結果、村上ファンドが多数株主になる直前まで行ったのです。一説によれば狙われたのは手つかずで会社にあった200億円の現金で、当時時価総額90億円だった会社の経営権を奪い藤田社長を追い出したら会社を清算して、200億円を株主に分配しようと企てていたのだと言われています。

 そのとき、サイバーエージェントに出資をして窮地を救ったのが三木谷社長でした。理由は「ベンチャーがたたかれているから助けないとね」という漢気からだったと報道されています。いずれにしてもこのときの手助けがなければ、わたしたちもAbemaTVでサッカーのワールドカップを視聴することができなかったはずです。

 その経緯を考えると、当時とは逆に楽天という日本を代表するベンチャーが「削られている」いま、それを助けるのは藤田社長の使命ではないのでしょうか。

 おそらく過去2年間、楽天モバイルの苦境が続いた状況ですから、三木谷社長はそうとう消耗しているはずですし、この先を決める交渉の場でも切れるカードは多くはありません。

 しかし、サイバーエージェントが楽天の後ろ盾になると宣言すると実は、未来予測としてはもうひとつ前提が覆ります。金ではなく立ち回りで恩返しをすることで、楽天の未来を買収ではなく独立維持に持ち込めるかもしれない。ここから話がさらに混迷しますが、読者の皆さんもお付き合いください。

 (1)(2)(3)(4)、つまりリアルのビッグデータ、ネットのビッグデータ、GPSデータ、ポイント経済圏の四つを握って、巨大な国産クラウドと協力な国産AIを加えてGAFAMに対抗するビジネスモデルを組もうとしたとしても、実はもう一枚カードが足りないのです。

 そのカードとは?