グーグルやメタの成長エンジンがその要素ですし、アマゾンが実質的に自社消費をしていたのもこの要素です。それは「広告」です。

(5)強い広告メディアを持っている

 という五つ目の条件が、実は重要なのかもしれないのです。

 GAFAMとかマグニフィセントセブンとか、アメリカの巨大IT企業をくくる言葉はいろいろありますが、そこにネットフリックスを加えるという考えが存在します。実はFANGと呼べるフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルというのはビジネスモデルが広告を軸に補完関係にある点で、この先の成長余地としてはさらに一段上が狙える4社でもあるのです。

 その視点で伊藤忠から見た価値を考えると、ソフトバンクならヤフーを持っている関係で、ビッグデータをAIで料理をしたあとの換金の出口を広告に持っていくことは容易なのですが、楽天単独だとそこが弱くも見えるのです。

 しかし仮に、「楽天市場とAbemaTVは資本は薄くてもブラザーなんだぜ」と言い出せば、花嫁の価値がさらに上がる。言い換えれば、楽天の交渉力がより強くなることになります。

 かつて憔悴(しょうすい)していた藤田社長の前にさっそうと三木谷社長が出現したように、その逆が起きれば恩返しになるうえに、サイバーエージェントが日本版GAFAMの一角に名乗りを上げる展開すらありえるストーリーに変わります。

 さて、話をまとめます。

 KDDIのローソン買収が、コンビニ業界と携帯業界そしてネット業界に大きな波紋を投げかけました。業界では急激に楽天に関心の目が注がれる状態になっていますし、楽天モバイルが単純に経営破綻するという嫌な未来が、少し遠のいたのも事実です。

 未来予測としては、「まったく予想がつかない混沌が生まれた」というのが正直なところですが、今回の記事でその混沌ぶりと、たくさんの可能性がご理解いただけたのではないかと思います。引き続き業界を注目したいと思います。

楽天はもう食べごろ!喰らうは「KDDI・ローソン」か「伊藤忠・ファミマ」か…サイバー藤田の“漢気救済”はある?Photo:Diamond