楽天の「伊藤忠・ファミマ連合への加入」は
消費者にとっては悪い話ではない
三菱商事連合への対抗軸として伊藤忠・ファミマ・ソフトバンク連合ができるというのがひとつわかりやすい絵柄なのですが、それと比較すると伊藤忠・ファミマ・楽天連合というのは、実は伊藤忠にとっての座組みとしては悪くはないのです。
というのは前者、つまりソフトバンク連合でも(1)(2)(3)(4)の4要素がそろうといえばそろうのですが、問題が二つあります。
一つは、ソフトバンクは(2)と(4)、つまりネット通販とポイント経済圏の力が少々弱いこと。そしてもう一つが、連合を組む場合にどうしても対等な力関係になってしまうという問題です。
それと比較すれば伊藤忠・ファミマ・楽天連合というオプションは(2)と(4)が異常に強いうえに、やり方次第ではファミマと楽天を伊藤忠の下に配置することができる可能性があるわけです。さらにいえば、そこまで完成させればあとはドコモと伊藤忠はIOWNを支援する形でいくらでもつながることができる。
そう考えると、カラスになって果実を横からかっさらうという絵柄に伊藤忠・ファミマ連合が関心を持つ可能性は、資本主義の世界では起こりうる事態だと思うわけです。
さて、そこで楽天です。楽天モバイルの状況が好転しない限り、このままじわじわと銀行団に宝物を削られていくかと思っていた状況で、突然、「花嫁」として業界中の注目が集まるという前提変化が先週起きたのです。
ひとことで言えば楽天に「風が吹いた」わけで、これまで選択肢になかった生き残り策を考える余地が生まれたことになります。つまり切り売りではなく楽天グループをまるごと迎え入れたいと言い出す相手と手を組む可能性です。
これは、楽天という企業そのものを応援している消費者にとっては朗報です。どんなに楽天が好きでも、このままだと楽天ポイントは改悪され、しまいに家計に優しい楽天モバイルのサービスが止まってしまったらとハラハラしながら応援してきた消費者たちにとっては、新たな可能性が見えたことになるからです。
しかし、きれいごとだけで済むかどうかは疑問です。経済の再編というものは必ず資本という権力の移動を伴います。結果として三木谷浩史社長の掲げてきた未来が残るのか消えるのか、このあとのリーダーシップが未来を左右します。