化学物質を海に流す。雲に塩水をかける。大気中に反射性粒子をまく。温室効果ガスの排出を抑制するための世界的取り組みがうまくいっていないため、科学者は地球を冷やすために以前は考えられなかった手法に頼っている。このような地球工学的手法は、環境に手を加えて意図しない結果を招くことを恐れる科学者や規制当局によって、かつてはタブー視されていた。今では研究者たちは、屋外でそうした方法を試すための資金を政府や民間から得ている。変化の背景には、気候変動により熱波や暴風雨、洪水の壊滅的被害が拡大する中、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが十分進んでいないとの懸念の高まりがある。このプロジェクトに携わる科学者や企業幹部らは、地球工学は排出削減に取って代わるものではないと話す。それよりも温暖化を数年遅らせ、長期的に炭素排出量ゼロの経済に移行するための時間を稼ぐ方法だ。