OGPそもそもこの世はカオスだ。 Photo by HasegawaKoukou

静岡・伊東市にある、巨大な私設テーマパーク「まぼろし博覧会」。おびただしい数の、昭和レトロなオブジェクトや怪しげな品々が、何の解説なくひたすら展示されている。そこはまさに「カオス」だが、ただのB級スポットにはない魅力が人々を惹きつけている。テレビ番組でこのテーマパークの存在を知った、ジャーナリスト・田原総一朗氏がその理由を探る。そして我々取材チームを出迎えてくれた館長「セーラちゃん」の正体とは?(文・構成/奥田由意、編集・撮影・映像/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光)

 

伊豆半島の山間に突然現れる
怪しげな巨大テーマパーク

田原さん田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所や東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経て、1977年からフリー。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)」受賞。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『さらば総理』(朝日新聞出版)、『人生は天国か、それとも地獄か』(佐藤優氏との共著、白秋社)など。2023年1月、YouTube「田原総一朗チャンネル」を開設。

 ある晴れた土曜日の午後。静岡県伊豆半島、JR伊東駅から東南に約6キロ、海と山に挟まれた国道を走ると、突如、「まぼろし博覧会」という文字と印象的なキャラクターが描かれた看板が現れる。

 まぼろし博覧会は「キモ可愛い楽園」を標榜(ひょうぼう)しており、日本最大級のB級スポットとの呼び声も高い。

 メディアやSNSで取り上げられることも多い。2022年1月に放映されたNHKの番組「ドキュメント72時間 ゆめまぼろしのテーマパークへようこそ」はとりわけ反響が大きく、放映後、コールセンターに「(演出ではなく)本当にそんな場所があるのか」と問い合わせが殺到したという。

 左折して駐車場に入り、あらためて建物を見ると、山の地形を利用した、ガラス張りの砦のような施設がそびえ立っている。

 駐車場に面する入場門は、大正4年(1915年)に京都の岡崎公園で開催された京都博覧会の正門を模している。そこからは山門のような長い階段が受付へと導く。

入口京都博覧会の正門を模した入口。この先の階段を登ると受付がある

 田原総一朗氏をはじめとした我々取材チームを確認するや否や、その階段を駆け下りて迎えてくれたのは、同館館長の「セーラちゃん」だ。

 セーラちゃんは、X(旧・Twitter)などのSNS上でも人気者だ。来館の記念に一緒に撮影したツーショットの写真をアップしている人も多い。セーラー服など服装のバリエーションは200着以上もあり、2021年10月に発売した(まぼろし博覧会自体ではなく)ひたすらセーラちゃんだけを撮影した写真集は、何とすでに完売し、第2弾が発売されているという。

 入場門から受付に至るまでの階段脇にも、巨大な招き猫、ゴリラが女子高生になった「美少女神社」、2023年にプロ野球で優勝した「阪神タイガース神社」、恐竜のオブジェ、はためくおびただしい数のこいのぼりなどが、入場者を迎える。隣り合うもの同士は脈絡なく並べられ、祭ばやしのBGMも流れてくる。「楽しい気分になってもらうため」だとセーラちゃんは言う。

阪神タイガーズ神社阪神タイガース神社を眺める田原氏とセーラちゃん

 受付の隣にある売店には、まぼろし博覧会のグッズやTシャツなどのほか、素人のような文字で「全共闘」と書かれた、全共闘のヘルメットのレプリカが売られている。

ヘルメット全共闘のヘルメットのレプリカ。その下には東大に関する書籍が売られている

「全共闘時代の立て看板やヘルメットの字というのは、皆、ペイントが慣れていないので下手くそ。だんだん慣れてきて字が上手になっていくのですが、下手なほうがエネルギーがある」とセーラちゃん。本も多数並び、田原氏は親交のあったジャーナリストの故・上田哲氏の著作を懐かしそうに眺めていた。
※元NHK職員でジャーナリスト/労働組合運動家/社会党議員。データハウスからは『戦後60年軍拡史』『社会党大好き!』等の著作がある

上田哲氏の著書故・上田哲氏の著作 
談笑する2人ユニークなタイトルが並ぶ書籍コーナーで本を眺めながら談笑するふたり

 受付を通り、いよいよガラス張りの建物の中へと進む。