そこで、どうすれば儲けを出せるか、会社を挙げて考えることになりました。

 まずは、トヨタで学んだことを活かし、製造の標準作業を可視化することから始めました。標準3票(トヨタ生産方式の標準作業に不可欠な工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票の3点セット)を作って、それぞれの手順を分析し、どのくらいのバラツキがあり、どう品質に影響するのかを明らかにしました。

 その上で、OEM先の担当者も工場に呼んで説明・提案を行いました。

 経営状態を正直に話して、品質に影響のないものからカイゼンしたいと申し入れました。まず、商品の包装紙を安価なものに変えさせてほしいと提案しました。

 また、一日に製造する量を増やせば一つあたりの単価は落ちます。そこで、パンは発酵食品なので難しいのですが、品質を落とさずに生産量を上げる方法を考えました。

「水の配合などの調整をしながらスピードを上げて機械に通せば、このくらいの分数なり秒数で発酵するので、このタイミングで出して温度や時間をこう設定すれば、前と変わらない品質のものが仕上げられます」

 このように、一度卓上でシミュレーションし、さらに現場でテストして披露しました。

原価率を70%まで下げ
1年半で黒字化を達成

 重要なのは、感情ではなくロジックです。このように「カイゼン」を見せたことで、OEM先には「この会社は信用できる」と思っていただき、これ以降、受注量が一気に増えました。

 こうした会社の評判は業界でも噂になるのでしょう。さらに、某有名コンビニチェーンからもお声がけいただき、この2本の柱ができたことによって業績は一気に回復したのです。

 結果的に、初年度で原価率を70%くらいまで下げることができ、1年半で黒字化し、経営が安定しました。

 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていくことができました。

 60人いた従業員は最終的には24人になっていました。でも、一人あたりの労働時間自体は増えていません。

 売上や受注量は増加しているので生産性は上がっていました。