ちょっと昔の
欧州フォードやオペルの乗り味に近い

 よくいえば曲がりやすさを演出したセッティングといえるが、スポーツセダンを名乗るからにはもう少し一体感がほしい。タイヤもシステム出力に対してパフォーマンス不足で、コーナー進入時にノーズがなかなかインを向かず、“我慢”と“待ち”のドライビングだった。これはタイヤの変更、もしくは駆動力制御の活用で解決できるだろう。

 乗り心地は常用域では少々突き上げを感じるものの、速度が上がるにつれてしなやかさが増す。ちょっと昔の欧州フォードやオペルの乗り味に近い。話を聞くと、欧州のエンジニアリング会社が開発に参画しているという。

 現時点のSEALには、ハードとしての完成度は高いがクルマとしての完成度は志半ば……といった印象を受けた。少々厳しい評価だが、おそらく「最高の技術を盛り込めば、必ずいいクルマに仕上がるはず」という技術屋集団的な考えが強いのではないだろうか。数値に表れにくい感性領域へのこだわりは老舗自動車メーカーと比べると差があるように感じた。ただ、彼らがその重要性に気づき始めたら、グッと完成度が高まるに違いない。アジアパシフィック地域担当の劉氏は、「BYDの強みは、市場の動向をいち早くとらえて製品をアップデートしていくこと」と語っている。日本での価格は未発表だが、間違いなく戦略的なプライスを掲げてくるはずだ。

(CAR and DRIVER編集部 報告/山本シンヤ 写真/山本シンヤ+BYD)

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