車名は“アザラシ”の意味
システム出力390kWの2モーター車に試乗
SEALの試乗会に選ばれた場所は珠海(Zhuhai、チューハイ)国際サーキット。コース長4.3kmでコーナー数は14、典型的なストップ&ゴー・レイアウトである。一般的にBEVの試乗は公道が主だが、サーキットを選択したのはBYDの自信の表れだろう。
いつものように見た目チェックから。ATTO3/ドルフィンはクロスオーバーモデルだが、SEALはセダンタイプ。グリルレスのフロントマスク、4ドアクーペシルエットのサイド、そしてシンプルなリアと、オーソドックなプロポーションながら先進性を感じさせる。スタイリングは、元アウディのデザイナーによるものだ。なお、SEALとはアザラシを意味するが、フロントマスクの表情には何となくそんな印象も!?
全長×全幅×全高4800×1875×1460mmのボディサイズは日産スカイラインに近い。
インテリアは運転席前に小型のフル液晶メーター、センターにBYDの特徴である回転式の大型ディスプレイを備える。高めに設定されたセンターコンソールによりコクピット感覚が強くスポーティな印象がある。2910mmのロングホイールベースを活かし室内空間は見た目以上に広い。とくに後席の足元スペースはワンクラス上のサルーンに匹敵する。
パワートレーンはシングルモーター(後輪駆動)、ツインモーター(4WD)、そしてPHEV(日本導入なし)をラインアップ。今回の試乗車はツインモーターのハイパフォーマンスモデルで、フロント160kW/リア230kWのモーターを搭載、システム出力は390kW/650Nmを誇る。バッテリーはブレイドバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン)で容量は82.5Wh、航続距離はWLTP値で575kmである。
シャシーはBYD最新のeプラットフォーム3.0を使用。バッテリーセルを車体構造の一部として使うセル・トゥ・ボディを新採用し、モジュールやパックを省略する手法で車両重量は2185㎏とバッテリー容量を考えれば軽量だ。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式を採用。タイヤは235/45R19サイズのコンチネンタルECOコンタクト6Qを履く。
まず、クルマの基本性能を確かめるためにゆっくり走る。アクセル操作に対する反応のよさはいうまでもないが、加速の立ち上がりは意外と緩やかでジェントル。微細なコントロールもしやすい。続いてアクセルを全開にしてみると、ハイパフォーマンス系EV特有の脳天揺さぶる怒涛の加速……と思いきや、実際は“加速感は少ないが速い”だった。おそらく、時間あたりの加速度と変化率(=躍度)が上手にコントロールされているのだろう。0→100km/hデータは3.8秒と公表されている。ドライブモードはECO/ノーマル/スポーツの3種。加速レスポンスではなく最大トルクが異なる設定だ。
フットワークはボディ剛性をはじめとする基本性能が非常に高い。だが気になる点もある。そのひとつがコーナリング時の一連の流れの連続性。速度を上げると穏やかなステアリング系なのにコーナリング時のクルマの動きは想像以上に機敏とチグハグなのだ。