30代で東証プライム上場企業の執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)となった石戸亮氏が、初の著書『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)で、デジタル人材の理想的なキャリアについて述べています。
デジタル人材は、ビジネスの現場でどのように求められているのか。
本当に需要のあるデジタル人材として成長するためには、どんなスキルを身につければいいのか。
デジタル人材を喉から手が出るほど欲している企業に迎え入れられ、そこで重用されるには、どんな行動を取ればいいのか。
本連載では、デジタル人材として成長するためのTo Doを紹介していきます。

【CDOの考え】ヘッドハントされたいなら是非とも知っておきたいこと・ベスト1Photo: Adobe Stock

定期的にエージェントに会う

-今の会社では明らかに自分の能力を持て余している
-もっと自分のスキルを活かせる会社が他にあるのではないか?
-もっと自分を「高く」買ってくれる会社があるのではないか?

 と切実に感じた時、さて、どうやってチャンスをつかめばよいのでしょうか?

 人材会社に登録してオファーを待つのはもちろん定番の方法です。ただ、「転職したい」「キャリアアップしたい」と思った時に初めて登録しても、あまりよい結果は得られないでしょう。

 そのためそれ以前に、普段からやるべきことがあります。それは、今、市場でどんな人材が求められているのかを、自分が近々転職する予定がなくても定期的に把握しておくことです。

 私自身、自分が今の市場でどれくらいの価値があるのか、どの程度求められているのかというのを、最低でも2、3年に1回は人材会社の方と直接会って聞き取るようにしています。

 なぜ、自分の価値を常に把握しておく必要があるのか。それは、私が最初に転職を考え始めた時に遡ります。新卒で入社したサイバーエージェントの子会社の取締役をやっていた時のこと。思うところあって人材会社の方に相談したところ、「石戸さん、サイバーエージェントの子会社の役員だからって、全然バリューないですよ」と言い放たれ、大きな衝撃を受けました。

 実は当時の私は、戦略コンサルティング企業や大手IT企業への転職を狙っていました。

人材会社の方:「だって、子会社役員って何をやっているんですか?」

私:「スマートフォンの子会社を立ち上げて営業責任者をしています」

人材会社の方:「もし戦略コンサルティング企業へ幹部として入りたいなら、入社早々ものすごく大きいナショナルクライアントの案件を取り付けなきゃいけません。石戸さん、誰もが聞いたことがあるような大手企業の社長や幹部とつながっています? 大手企業からディール(商談)を取ってこられますか? さもなければ経験や年齢的に5~10年コンサルで鍛えてきた生え抜きの人材と競争になりますよ。彼らはものすごい質とスピードで調査や資料をアウトプットしますよ」

 私は黙り込んでしまいました。当時のサイバーエージェントはたしかに上り調子でしたが、いかんせん若い会社。つながっている大企業といえばインターネット企業くらいで、誰もが聞くような大手企業には――私だけでなく他の幹部たちにも――人脈はなかったのです。

 それに、大手企業のエグゼクティブとつながるためには、こちらもエグゼクティブな経験や雰囲気をまとっていなければなりません。「釣り合いの取れる格」と言ってもよいものです。若い会社というのは、いくら業績が良くても「若いノリと勢い」みたいなものが社風として抜けきれず、それが社員にも表れる。当時の私にも表れていました。

 人材会社の人には「子会社の役員というだけでは、石戸さんが期待しているほどの価値はないです。もうちょっと鍛えてから来てください(意訳)」と言われ、かなり落ち込みました。

 私はそれ以来、その時所属している会社で結果を出すために奮闘するのと並行して、定期的に人材会社のエージェントやヘッドハンターと会い、どんなチャンスがあるのか、その時点での市場ではどんな人材が求められているのかを把握するよう努めました。エージェントに会う時には、その時点での自分の市場価値を単刀直入に聞きます。「今、自分ってどうですかね」と。

 現在は親身になって考えてくれる、かつ、いつでも連絡できる関係性のエージェントさんが3、4人ほどいて、時々ご飯も食べに行く仲になっています。みなさんそれぞれに得意分野が異なり、この人は外資系が非常に詳しい、この人は日系のCEOとたくさんつながっている、この人は市場の変革期の会社を良く知っている――など様々です。皆、私のキャリアについて利害関係なく中立的な立ち位置で意見を(時に厳しいことも)言ってくれるので、とてもありがたい存在です。

※本稿は『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。