30代で東証プライム上場企業の執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)となった石戸亮氏が、初の著書『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)で、デジタル人材の理想的なキャリアについて述べています。
デジタル人材は、ビジネスの現場でどのように求められているのか。
本当に需要のあるデジタル人材として成長するためには、どんなスキルを身につければいいのか。
デジタル人材を喉から手が出るほど欲している企業に迎え入れられ、そこで重用されるには、どんな行動を取ればいいのか。
本連載では、デジタル人材として成長するためのTo Doを紹介していきます。

ガツガツしていては「わらしべ長者」になれない
皆さんはセミナーやイベントで名刺交換した登壇者や発表者の方と、「お客さん」としてではなくつながりたい場合、その後どのようにコミュニケーションを取っているでしょうか。
「来週か再来週、一度会社に製品説明に伺わせてください」や「来週、ランチにお誘いさせてください」など、本当に気が合えば良いですが、普通のビジネスパーソンの「来週」って、比較的予定が埋まっていますよね。私もよくそういうメールをいただきますが、来週いきなり製品説明をしたい、ランチでお話を聞きたい、と言われて、いろいろ考えて赴くと、なんだか論点も緩く、ふわっとした感じで終わることも多々あります。
これは提案ですが、セミナー登壇者と名刺交換後のメールで、いきなり製品説明のアポイントの候補日を一方的に送ったり、すぐに翌週のランチに誘うよりも、セミナーで聞いた内容についての感想を、簡単でもいいので送ってみてはいかがでしょうか。これは相手も嬉しいですし、一方的ではないコミュニケーションです。感想をもらえると「ああ、あの発表はこう捉えてくれたんだ」ととても参考になりますし、共感領域も生まれます。
何ヵ月後かに別のセミナーで登壇したらまた参加してくれた方がいて、再び感想をくれたとしたら、さらに嬉しいですし、「この人とは長く付き合えそうだ」と思えます。
こんなことがありました。数年前、あるマーケティングのイベントで登壇した際、とある菓子メーカーの取締役の方と名刺交換させていただきました。当時の彼は自社のドメスティックな体制や人材不足に困っていたので、私はささやかながら、イベント後も色々な情報を提供してさしあげたところ、いたく感謝されました。
そして時は経ち、私が小林製薬に入社後のこと。私は参加していないメーカーの集まりに小林社長が出席した際、隣の席がその取締役だったそうです。その際、彼は「石戸さんと3、4年前に会って、すごく世話になった。小林社長、さすがの採用ですね」と言い、うちの社長も「そうか、ちゃんとした人を採用したんだ(笑)」と安堵したとのこと。
過去の些細な出来事が、今つながったのです。想定はしていませんでしたが、当然ながら、私は社内で今まで以上に仕事がやりやすくなりました。
出会ったひとりひとりとの関係性が、次に出会った人に対する後押しになる。ある種「わらしべ長者」的にコネクションが広がっていくわけです。
過去の一期一会が、今の自分に影響を及ぼす。イベントでの名刺交換は「点」でしかありませんが、点を点で終わらせることなく、丁寧にフォローしていけば、のちのち「線」としてつながり、様々な「機会」につなげられるということです。
※本稿は『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。