“第三の選択肢”定期借地権は注意
借地をするときに注意してほしいのは、借りる期間です。
現在の法制度において、借地権は主に2つのタイプに分けることができます。ひとつは、実質いつでも土地を借り続けることのできる「普通借地権」。もうひとつは、ある年数が来たら原則として更地にして土地を返さなければいけない「定期借地権」です(法律上は前者を「旧法借地権」「普通借地権(新法)」、後者を「定期借地権(新法)」と呼びます)。
定期借地権の契約期間は50年以上と長期間であることが多く、一見問題がないようにも思えます。期限付きという条件がある分、普通借地権より値段も安いです。しかし、人生の選択肢は狭めないほうがいいというのが私の考えです。
例えば、「75歳になったら老人ホームに行く」と決めて30歳のときに50年の借地権を購入したとしても、その後の人生で考えが変わる可能性は十分あります。あるいは、大学で東京に行った子どもが地元に戻ってきて、「実家で同居しよう」と言うかもしれません。「実はあと10年で出ていかないといけなくて……」とせっかくの幸せな親子3世代の生活を諦めざるをえなくなったら、残念ですよね。
そもそも、今は人生100年時代。認知機能が落ちつつある80歳で面倒な引越しの手続きをしたり、90歳で家を失って路頭に迷ったりすることは、できれば避けたいはずです。ライフスタイルの柔軟性を担保しながら安心して暮らすためには、期限のない普通借地権を選ぶべきでしょう。
契約期間には注意したうえで「借りた土地に家を建てる」という第3の選択肢を使えば、土地価格下落のリスクや資産価値を心配することなく、自分が本当に住みたい場所で快適な生活を送る、ということが可能になります。
都市か、地方か。資産価値か、利用価値か――「豊かさとは何か」には、画一的な正解がありません。だからこそ私たちは、「どこに住みたいか」「どう暮らしたいか」を自分自身で考えていく必要があります。持ち家でもなく賃貸でもない“第三の選択肢”が、みなさんの「豊かさ」を実現する後押しになればと思っています。