ドイツではロシアの拡張主義や米国の欧州離れの可能性に対する警戒感が高まっており、国内ではかつてはタブー視されていた問題を議論する動きが広がり始めた。つまり、ドイツには自前の核兵器が必要かどうか、ということだ。ドイツの当局者は欧州の核保有国であるフランスと英国に対し、米国が北大西洋条約機構(NATO)に核抑止力を提供しなくなる事態を念頭に、代替計画を共同で策定するよう呼びかけている。一部の政治家や学者はさらに踏み込み、ドイツが自前の核兵器を必要とする日が来るのではないか、と問いかけている。核兵器の現保有国の一部は保有を拡大し、新たな保有国が生まれ、イランなどもその方向に進んでいるような現在、政策担当者が核拡散を巡る議論を行っているのはドイツだけではない。ただ、こうした議論は第2次世界大戦の敗戦以降平和主義を堅持し、核エネルギーと原爆の放棄に動いたドイツでは特に複雑な意味合いを持つ。