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「タイパ志向」「会社への帰属意識が低い」などといわれるZ世代は、中高年世代にとって、よく分からない存在で、マネジメントに苦労する経営者や上司は少なくない。Z世代の社員たちの離職を防ぐためにはどうすればいいのだろうか。(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)

Z世代の社員の多くが
安定を求める納得の理由

 中高年世代にとって、よく分からない存在と思われがちなZ世代とは、おおむね1990年代半ばから2010年代前半に生まれた世代で、ここ数年で社会人になった人たちのことです。

 以前、私のセミナーの参加者とメルマガ読者に対し、Z世代のスタッフに対する困り事をヒアリングするアンケートを行いました。寄せられた回答で目立ったのが、「向上心がない」でした。実際、「他人を蹴落としてでも昇進してやろう」と思うハングリー精神にあふれた人物は、Z世代にはあまり見かけません。

 彼らが幼少期にSMAPの曲「世界に一つだけの花」がヒットし、思春期に映画「アナと雪の女王」がヒットしました。それぞれ、「ナンバー1にならなくてもいい、オンリー1になればいい」「ありのままの自分になる」が主となるメッセージでした。

 言葉をそのまま受け取れば、「無理をせず、現状維持で良い」と解釈できます。一方、中高年世代が若い頃、テレビで流れていた栄養ドリンクのCMで、「24時間働けますか?」と訴えかけていたのと比べれば、大きな違いがあります。

 成長する過程で、見聞きしたモノ、コトは、人の価値観や思考に大きな影響を与えます。Z世代が生まれてから現在まで、日本は「失われた30年」などと言われ、リーマンショック、東日本大震災など暗いニュースが立て続けに報じられていました。デフレによる経済不況が続く中で、親世代の年収が伸び悩み、将来に不安を感じざるを得ない状況に置かれてもいました。そして、近年は数カ月先も見えない予測不能なコロナ禍を経験しました。

 物心ついた頃から現在まで、不確実性の高い時代を生きてきたので、Z世代は会社の中で出世してもメリットはなく、むしろリスクが大きいと悟り、できるだけ目立たず、安定した生活を選ぶ人が多いのです。