人口動態の変化により、大国になって
大国でなくなる国の典型例が日本

 超大国になるか、発展途上のままか。経済的に豊かになるか、貧困にあえぐか。国家の未来は本書で提示した人口に関する「10の数字」が照らし出してくれます。20世紀に米国と旧ソ連が超大国となったのも、ヨーロッパの競合国をしのぐ人口増加があったからです。

 人口動態の変化により、大国になって、大国でなくなる国の典型例が日本です。もし日本が19世紀終わり~20世紀初頭に人口爆発が起きていなければ、大国になることはなかったでしょう。同様に、もし米国の人口が1億人で止まっていたら、二つの世界大戦で大きな役割を果たすことはなかったでしょう。

 大国になるには、多くの若者が必要です。英国は日本ほどひどくありませんが、若者の労働力が不足しています。戦争が起きたときに若者が少ないと、戦うのは難しい。ウクライナ戦争は、テクノロジーの重要性とともに、実際はboots on the ground(地上軍)もそれ以上に重要であることを示唆しています。

 繰り返しますが、Demographyへの理解なくして日本がこれからどこに向かっていくのか、真に理解することはできないはずです。実は、それほど複雑な学問ではないですよ。経済を深く理解するには非常に複雑な数式を幾つも理解しなければなりませんが、Demographyはrocket science(難しい理屈)ではありません。本書から、Demographyをグローバルかつ歴史的なコンテクストで理解してほしいです。

>>後編『「0.9対1」恐怖の数字が暗示するニッポンの大問題』(3/10(日)未明公開予定)を読む

書影『人口は未来を語る』(NHK出版)『人口は未来を語る』(NHK出版)
ポール・モーランド 著、橘明美 訳
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