プレゼンの質を高めるには、情報編集のスキルがものを言う
ライバル会社研究などで、情報編集のスキルを鍛えてみよう

「プレゼンがうまい」「雑談力がある」と言われる人に共通する「情報編集」のスキルが、これからのビジネスパーソンにとって欠かせぬ力になっていく

――情報編集はビジネスの提案や創造にもつながる、とのことでしたが、たとえばプレゼンをするときなどにも活きてきそうですね。

田中 情報編集のスキルの有無によって、プレゼンの説得力は大きく変わってくるでしょう。プレゼンで何かを主張するからには、根拠が必要です。明確な根拠もなく主張しても、人を動かすことはできません。しかも、少ない情報に基づく心もとない根拠では不十分。そこで、情報編集がものを言います。まず、数多くの情報の中から厳選した情報を的確に整理する。さらに、その情報をただ流用するだけでなく、自分なりの分析・見立て・解釈を加えながら、アイデアをアウトプットする。これができれば、聞き手の共感を得られる可能性は大幅に高まるでしょう。

 情報編集のスキルがないと、得た情報を流用するだけになりがちですが、プレゼンでそれをやると「で、結局あなた自身の考えはどうなんですか?」ということになってしまいます。うまいプレゼンをするノウハウ本とか、講座なども山ほどありますが、テクニックに走っても、結局、喋る内容がうまく編集されていないと意味がない。情報をいろいろな角度から分析し、効果的に使う力を持っていれば、プレゼンのレベルは格段にアップします。

――一般企業でも、情報編集のスキルを高めるための機会が作れたら理想的ですが、そのためにはどんなことをやっていけばいいと思われますか?

田中 人事部主導の社内研修でやるとしたら、たとえば“自分たちのライバル会社”について研究し、レポートを作成してもらうのはどうでしょうか。個人でやってもいいですが、チームでやったらなおいいのでは。レポートを作るとなったら、いろいろと情報を集める必要があるし、それを精査して分析したものをレポートという形にすればアウトプットになります。競合他社の研究なら勉強にもなるので、情報編集のスキルを鍛えると同時に、知識という財産を得ることにつながるでしょう。

 日本の企業はわりとタコツボ化しがちで、他部門との交流がないことも多いですから、チームを作って作業すると面白い“化学反応”が生まれるかもしれません。また、たとえば、先に挙げたライバル会社の研究を、営業部門と開発部門でそれぞれ同時にやってもらい、お互いに発表し合う――というような試みも面白いのではないでしょうか。知見を共有し合うことができますし、質の高いアウトプットができれば議論の密度も高まるはずです。

――たしかに、情報編集力を育むと同時に得られるものが大きそうです。最近ではAIなどの影響で業務環境が刻々と変化し、先々の予測もしづらくなっています。そんななか、情報編集力も含めて、ビジネスパーソンに求められるものは多様化している印象ですね。

田中 確かに生成AIの登場で、仕事の仕方が大きく変わる可能性はあります。わからないことがあるときは、AIに聞けば、一通りのことは教えてくれるでしょうし、その答えを上司のところに持っていけば、及第点はもらえるはずです。しかし、みんながAIを使い出したらどうなるでしょうか。あなたの個性は失われ、差別化できないというジレンマが生じます。AIは過去の経験に基づいて弾き出された最適解である以上、宿命といってもいいでしょう。

 私は予測不能な現代において、枠を超えた創造性や型破りな発想ができるビジネスパーソンこそ重宝されると思います。そうした能力を養成するためにオススメなのが、仮説を作る力です。根拠のある情報からだけでなく、類推もフルに働かせて仮説を構築するのです。その際には今の流れに沿ったストーリーだけでなく、起こり得ない、あるいは起こってほしくないことまで想像力を働かせてみてください。その仮説を携えて、議論や商談の場に臨んでみると、あなたの視野や視点が他の人とはまったく違うことに気づくでしょう。そして、仮説の構築にこそ、これまでお話ししてきた「情報編集」のスキルが生かせることに気づくことでしょう。