「給料を上げて」会社と交渉した110人、しなかった39人→結果はどうなった?Photo:PIXTA

人間関係の悩みやモヤモヤした気持ちは、相手に伝えてみれば、意外と簡単に解決することも多い。たとえば上司に無理難題をお願いされたとき、給料を上げてほしいときなどの「交渉術」の大事なポイントを心理学者がアドバイスする。※本稿は内藤誼人『振り回されない練習 「自分のペース」をしっかり守るための50のヒント』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

「悪い思い込み」に注意せよ
世界は意外にも善意でできている

 私たちは、自分の脳内で勝手なイメージを作り上げてしまうことが少なくありません。そのイメージに影響を受けて、自分のペースを乱すこともままあるものです。とりわけやっかいなのが、「悪い思い込み」。

 あの人は自分のことを嫌っている。

 自分にあたりが強いのもそのせいだ。

 実はあなたのためを思っての行動であったとしても、思い込みのせいで相手の善意を悪意に受け取ってしまうのです。悪い思い込みが強すぎると、たえずピリピリと緊張していなければならず、無意味に疲れ切ってしまいます。これでは人間関係を楽しむことなどできないのではないでしょうか。

 私たちが人の善意を過小評価してしまう傾向にあることは、実験でも確認されています。

 コロンビア大学のフランシス・フリンは、42名の大学生に、「知らない人に10分かかるインタビューを頼んできてほしい。さて、5人のノルマを達成するのに、何人に声をかけなければならないと思う?」と尋ねてみました。

 すると平均で「20.5人」という答えが返ってきました。応じてくれるのは4人に1人くらいで、4分の3は拒絶するだろう、と推測したのですね。

 ところが実際にインタビューを頼みに学生を送り出したところ、現実には10.5人に声をかけただけで達成できました。20人に声をかける必要などありませんでした。

 次にフリンは第2実験として、「他人の携帯電話を借りるのに、何人に声をかけなければならないと思う?ノルマは3人」という課題で見積もってもらいました。

 すると、学生の見積もりの平均は10.1人でしたが、実際に試してみると平均6.2人で課題を達成できました。

 さらにフリンは第3実験として、「離れた場所にあるキャンパス施設まで、道案内をお願いしてほしい。ノルマ1人」という課題で見積もりをしてもらいました。学生の推測した平均は7.2人でしたが、実際には2.3人でうまくいきました。

 この実験でわかるように、私たちは、人の善意をかなり過小評価しています。

 世の中には、そんなに悪い人なんていません。たいていは、自分と同じように、気のいい人たちばかりなのです。

「私が何かをお願いしても、どうせ断られるに決まっている」などと、ネガティブな考えをするのはやめましょう。お願いしたいことがあれば、お願いしてみてください。全員が応じてくれるわけではありませんが、かなりの高確率でOKしてもらえるはずですから。