「空いた実家をそのまま貸せばいい」とお話しすると、「リフォームが必要なんでしょう?」とか「そもそも大都市近郊だと可能な話で地方では無理なんでしょう?」という反応がかえってくることが多いと語るのは、不動産投資家で空き家再生コンサルタントの吉原泰典さん。その質問に対しては「古くても地方でも大丈夫! 貸せます」と多くの方が驚かれるそうです。本連載では、「貸すか売るか自分で使うか」判断の分かれ目はどこなのか? なぜ「そのまま貸す」ことがお勧めなのか? などを解説し、「誰もすまなくなった実家」をそのまま貸すためのノウハウを話題の書『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』の中からご紹介していきます。

【空き家再生コンサルは知っている】空いた実家を焦って売ってはいけない「合理的理由」Photo: Adobe Stock

「そのまま貸す」から低リスク高リターンになる

 誰も住まなくなった実家をきちんと片付けそのまま貸す最大のメリットは、元手がほとんどかからないことです。とっくの昔にローンは完済しており、親が暮らしていたとき台所や浴室のリフォームも済ませていることが多く、大々的なリフォームをしないのですから当然です。

 それでいて毎月最低でも4~5万円くらいから、場合によっては10万円程度の賃料が入ってきます。大儲けというわけにはいきませんが、ちょっとしたお小遣いに、老親の介護費用にあるいは年金の足しとしては十分ではないでしょうか。

 さらにいうと、潜在的な需要がある戸建て賃貸なので、一回入居者が入るとなかなか空くことがなく、入退去に伴う費用がアパートやマンションに比べて少ないのです。もともと物件価格も十分下がりきっていて、そこからさらに下がるわけでもありません。結果的に、リスクが低くとても効率のよい投資になるのです。

未来につながる宝の山

 そう考えれば、全国で増えている多くの空き家は「問題」ではなく、所有者にとっては副収入を生み出し、地域社会にとっては戸建ての貸家という生活インフラを提供する「資産」として位置づけることができるようになります。

 誰も住まなくなった実家は「葬り去るべき過去の遺物」ではなく「未来につながる宝の山」であることがわかるでしょう。

岡山の実家再生のリターンは150%

 私が岡山の実家を賃貸に出したケースでは、不動産投資としてのリターンを計算するとなんと150%になります。

 初期投資にかかった金額は64万円で、多くを占めるのが片付け費用の43万円です。その他は、借りてくれた人が畳の表替えを希望した分と仲介会社への手数料などで、すべて合わせて64万円です。一方、年間の賃料収入は8万円×12か月で96万円です。ですから計算上、表面利回りとしては96万円÷64万円=150%となります。厳密にいえば、実家の維持管理に要した過去からのコストを入れて利回りを計算すべきですが、過去の費用はその時々の生活費。今回の貸し出しに伴う費用は64万円で収まっています。

 ちなみに、この家はもともと昭和23年に大工だった祖父が3万8000円で買って、建物を自分で建て、昭和47年に150万円ほどかけて2階を増築したという記録が、父の日記に残されていました。

 不動産投資の世界では、初期投資(物件の購入代金や諸費用)に対する賃料収入の割合が10%もあれば超お得とされます。賃料収入からさらにローンの金利分や固定資産税等を差し引いた正味の手残りを基準にすれば5~6%でも十分成功といえるでしょう。

 それが、誰も住まなくなった実家をきちんと片付けそのまま貸せば数十%どころか100%を超えることも珍しくありません。

 繰り返しになりますが、昭和の木造戸建てにローンなど残っていません。相続した場合、他の資産(預貯金や株式など)にもよりますが、昭和の木造戸建てだけなら相続税はかからず原価はほぼゼロです(相続登記の費用などは除きます)。

 そして、親がずっと住んでいたのであれば電気、ガス、水道はそのまま使えるケースが多いでしょう。最低限、家の中を整理し、雨漏りしていたりシロアリの被害があればそれを補修すれば、賃貸住宅としての市場価値は十分にあります。

(本原稿は、吉原泰典著『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』を抜粋、編集したものです)