ジャニーズと戦った元文春編集長が、記者会見を見て感じたことジャニーズ事務所の記者会見はどう評価されるべきか。元文春編集長が語る Photo:ロイター/アフロ

今でも忘れられない
「ジャニーズの女帝」の言葉

 ジャニーズ事務所の元副社長・メリー喜多川氏から聞いた、忘れられない言葉があります。

「木俣さん、私はね、タレントには手を上げませんよ。顔に傷つけたら、商品ですからね。だけど、スタッフには手を上げます。身体で覚えさせるしかないこともあるから」

 このセリフ、それほど昔の話ではありません。2015年、SMAP解散の契機となった『週刊文春』でのインタビュー記事の直後、彼女が文春を訪れたときに言い放った言葉です。

「メリーさん、今の時代、体罰をやっているなんてことを言うもんじゃないですよ。しかも、あなたは副社長。私はマスコミですよ」

 そう軽く言い返しながら横を見ると、同席していたジャニーズの女性弁護士が下を向いたまま、聞かなかったふりをしていました。

 インタビューは、「SMAPは踊れない」「飯島(SMAPを育てた女性マネージャー)は踊れる子を育てられない」「だからジャニーズは任せない」「出て行きたいならSMAPを連れて出て行きなさい」と、取材班の目の前で激しくSMAPとそのマネージャーをこき下ろす内容でした。

「聞いたことは全部書いていい」と言われていたし、抗議を受ける立場でもないのですが、担当役員である私や新谷学編集長などが呼び出されて、延々と文春への長きにわたる恨みを聞かされました。数時間長広舌をふるい、最後に一言。

「でも、おたくの編集長(ジャニーズとの裁判が起きたときの松井清人編集長)って、お子さんいらっしゃらなかったのよね。それじゃあ、子どものことなんかわからないかも。ごめんなさい、人様のプライベートなことを言って……」

 そして、巨大なリムジンに乗って帰って行きました。

 もう80代というのに、黒い革ジャンに黒い革パンツの颯爽とした姿が似合う女性でしたが、その一方で、この人の下で働くのは願い下げだと思ったことを、9月7日に開催されたジャニーズ事務所の記者会見を見ながら、昨日のことのように思い出しました。