「ジャニーズ崩壊の第一歩」――私は、ジャニー喜多川氏の性加害問題についてジャニーズ事務所が開催した、4時間12分におよぶ記者会見が終わったあと、そう感じました。いや、「誰しもそう感じただろうな」と思ったのですが、翌日の新聞やスポーツ紙には「東山新社長・人類史上もっとも愚かな事件」「鬼畜の所業」といった見出しが並び、事務所が全面的に反省し、補償に応じる構えであることを強調した、ある意味、好意的な記事がほとんどのように見えました。

 相変わらず芸能メディアも大マスコミも、問題の本質から目を背けているのではないか――。私はジャニーズと孤独な戦いを続けた週刊文春の当時の指揮官として、脱力感を覚えてしまいました。

なぜいるべき人たちが
出席していないのか

 最初に疑問を感じたのは、記者会見の出席メンバーでした。東山紀之新社長、井ノ原快彦ジャニーズアイランド社長、そして藤島ジュリー景子前社長が出席しているのは妥当だと思います。しかし、当然出席しているべき白波瀬傑副社長は辞任したという理由で欠席。いつも記者会見に同席している顧問弁護士も出席していません。代わりに、西村あさひ法律事務所の木目田裕弁護士が同席しています。

 会見の趣旨を考えると、ジャニーズとは関係性の薄い人が同席していて、本来いるべき人たちがいないのです。「人類史上最も愚かな事件」の実態を解明し、補償することを宣言するのが会見の趣旨のはずなのですが、それなら危機管理専門の弁護士が出席する必要はありません。危機管理の目的は英語でいえば、リスクコントロールとダメージコントロール。つまり、事務所のイメージがなるべく悪くならないように記者会見を運営することですから、最悪の事件の解明に必要な人なのかは、疑問です。

「鬼畜の所業」による被害者への補償を認定するためには、相当な専門的技術が必要です。何よりも、ジャニー氏とメリー氏の2人だけで取締役会も開かれない密室で決められていた会社の運営について詳しく証言できる人がいないと、補償のための実態解明が不可能になるからです。

 ご存じのように、週刊文春はジャニー喜多川氏による性加害を裁判で認定させることに成功しました。当時、ジャニー氏側の弁護士が詳細に彼の反論を聞き取って弁護をした以上、どういう風に言い訳をしていたかを証言できるのは、その顧問弁護士だけなのです。