変局!岐路に立つNHK#3Photo by Nami Shitamoto

NHKは3月29日以降、「政治マガジン」など複数の人気サイトで新規記事の配信を停止する。これまでNHKは、放送内容とは異なる独自コンテンツをオンラインで配信することができた。だが、放送法の改正で、ネットでの独自コンテンツの配信ができなくなるのだ。特集『変局!岐路に立つNHK』(全8回)の#3では、NHKのデジタル戦略を巡る迷走を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

若者はテレビよりスマホ
「どうするNHK」

「若者はもはやテレビを見ていない」。NHKが2021年10月に実施した「メディア利用の生活時間調査」は、NHKが直面する深刻な事態を浮き彫りにした。

 調査は10代~70代の男女2407人を対象に、テレビ画面、スマートフォン、パソコン(もしくはタブレット)の1日の利用状況を聞いた。結果は、テレビ画面を見ている時間が3時間23分で、スマホは1時間18分、パソコンは34分だった。

 全体では、テレビの視聴時間がスマホの2倍以上だったが、実は30代以下では全く事情が異なる。30代以下では、男女共にスマホがテレビを上回り、20代男性ではテレビが1時間8分だったのに対し、スマホが3時間26分、パソコンが1時間2分だった。まさに圧倒的にスマホがテレビを上回ったのだ。

 現在の放送法では、NHKの受信料徴収はテレビの設置を根拠としている。人口減に加え、若者のテレビ離れによるテレビを設置しない世帯の増加で、受信料は今後先細りしていく可能性が極めて高い。

 そうした現実を背景に進められているのが放送法第20条の改正だ。今国会で改正案が成立すれば、NHKが行うウェブ業務は“必須業務”となる。要するに、NHKが発信するコンテンツのウェブ視聴に受信料を課すことが可能となる。

 ただし、この“大転換”は、従来のウェブ事業のリストラを伴うことになった。例えば、3月29日以降、「政治マガジン」などの人気サイトでの新規記事の配信を停止する。

 NHKのニュースサイトを担当するある職員はこう漏らす。「これまで自分たちが積み上げてきたことが、全否定されたようだ」。同職員によると、局内ではウェブ事業の大きな方針変更によって混乱が生じているという。

 次ページでは、NHKが3月に配信停止するサイトに加え、配信停止を巡る混迷ぶりを明かす。放送法改正を見据えた方針変更では、昨秋にLINE公式アカウントで配信記事のアクセス数が激減した事態も生じた。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料を基に、方針の中身に加え、具体的なアクセス数なども詳報する。