NHKは2023年10月、27年度までに1000億円のコスト削減を柱とする中期経営計画を発表した。今後、メスが入れられることになるのが、職員の待遇だ。しかし、今春の新たな給与制度では、中堅職員とシニアの待遇が改善。中堅ポジションの基本給も5000円アップとなる。さらに、57歳で基本給を2割カットする役職定年も廃止される見通しだ。特集『変局!岐路に立つNHK』(全8回)の#4では、大きく変わるNHK職員の給与や待遇を職位別に実額ベースで明らかにする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
NHKの今春の新給与制度で
中堅の基本給が5000円アップ
NHKの“聖域”に踏み込んだ会長が、過去に1人だけいる。2011年から13年までNHK会長を務めた、東海旅客鉄道(JR東海)出身の松本正之氏だ。歴代のNHK会長の中で彼だけが振るった“大なた”が、職員給与の大幅カットである。「NHK職員の給与は高過ぎる」という世間の声を聞き入れたのだ。
13年2月、松本体制下の執行部は「今後、5年間で基本賃金を10%程度削減する」という改革案を提示した。さらに、基本となる勤務地が設定され、各地域の所得水準を踏まえた給与体系の「地域職員」も導入した。現在、地域職員の待遇は全国職員と同一にはなっているものの、基本給の金額は13年の改革がベースとなっている。
22年度の決算によると、NHK職員の給与総額は1112億円で、退職手当や厚生費を含めると1607億円に上る。これは、受信料収入の約3割に当たる。今後NHKは、人口減とテレビ離れにより、受信料収入が先細りしていく可能性が極めて高い。現執行部は「人件費については削減の対象とはせず、現在の給与水準を維持する」としているが、受信料収入の減少に合わせ、職員の待遇に再びメスを入れる場面が出てくるかもしれない。
一方、インフレによる物価高で、NHKの労働組合である「日本放送労働組合」は基本給ベースでの賃上げを要求している。23年3月、NHKの稲葉延雄会長は経営委員会で「ベアをするかという議論をするための諸条件が体制として整っていない」と発言し、23年度は基本給の改定を見送った。24年度については目下、経営と労組で交渉が進んでいる。
ダイヤモンド編集部は、NHKの執行部が組合に提示している新たな給与制度に関する内部資料を入手した。資料には、中堅以上の一部の職能グレードに限り「基本給5000円アップ」が盛り込まれている。今後、組織の“スリム化”の検討も避けられない中で、職員の待遇はどう変わっていくのか。
次ページでは、内部資料を基に職能グレードごとの基本給や手当などの実額を公開する。さらに、新給与制度で廃止される手当を明らかにするほか、拡充が進んでいるシニアの給与や待遇の中身についても詳報する。