技術屋肌で凝り性の敬之さんは、麹造りでは防水透湿布など新素材を用い、醸造機器は独自の改良を加えて使う。また、8時間労働週休2日制を徹底するなど、就労条件も進歩的だ。その一方で、大正時代の100年物の木桶を再生し、木桶仕込みの酒も醸す。「木桶の醪(もろみ)発酵は、土地の環境に敏感。気候に左右され手ごわいが技術が上がる」。努力は結果に表れ、23年に英国で開催された日本酒コンクールでは、山田錦で醸したスパークリングや生酛の酒など出品した三つ全てが賞を受賞。「加西市の山田錦の地位向上につながる」と喜ぶ。契約農家には酒米に難しい注文を付ける分、支払いも増やす。就農する若者が増え、農家は向上心が高い若手ぞろいになり、農家発の企画酒もある。「酒は土地の風土と思いが造る」が持論。播磨の米と水と人で、播磨の地酒を追求する。

新日本酒紀行「富久錦」富久錦 純米吟醸 播磨路
●富久錦・兵庫県加西市三口町1048●代表銘柄:富久錦、純青、Fu.●杜氏:村崎哲也●主要な米の品種:山田錦、兵庫夢錦、愛山、渡船、キヌヒカリ、辨慶
新日本酒紀行「富久錦」酒蔵外観 Photo by Y.Y.
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