新日本酒紀行「熟露枯」 「どうくつ酒蔵」受付 Photo by Yohko Yamamoto

戦車工場跡の地下洞窟で熟成させた、エレガントな大吟醸

 総延長600mにも及ぶ洞窟は、戦車製造工場として建造された。坑道3本と連絡する5本の横坑から成り、戦車が自走できるように高さ、幅共に3.5mのかまぼこ形だ。全て人力で掘られ、岩肌にごつごつした掘削跡が残る壮大な建造物だが、完成予定日が1945年8月15日で、一度も使われないまま終戦を迎えた。「意匠・技術力を超越した迫力が感受される」と土木学会選奨の土木遺産と、那須烏山市の近代化遺産に認定される。

 この洞窟で、99年から贅沢な大吟醸酒の熟成を試みたのが島崎酒造だ。創業は1849年で、2代目の島崎熊吉さんが蔵を那須烏山に移し、大の相撲好きから銘柄を「東力士」と命名。5代目の利雄さんは熟成酒に力を注ぎ、6代目の健一さんが引き継いで、家紋のうろこにちなんで古酒を「熟露枯(うろこ)」とした。実は利雄さんは中学生のとき、学徒動員でこの洞窟を掘ったのだ。