通所型施設に次いで
入所施設の必要性が浮上

「セルプ花」は設立に向けて準備の段階から一緒に活動してくれた保護者や後援会「セルプネット21」の応援を受けながら、班活動やさまざまなイベントもにぎやかに開催、順調に運営を続けました。

 開設の年には屋外作業所兼店舗を増設、パン工房の設備をより充実させるための改修工事、さらに菓子の営業許可を取得し、翌年には施設内に店舗も開店しました。施設内で製作したものを販売するためです。

 ただつくるだけではなく、またいかにも福祉施設がつくったという『アマチュア』然としたものではなく、市販の商品と肩を並べても遜色がなく、堂々と勝負しながら販売できるものにしたいという当初からの構想を実現するためのものでした。

 通所型授産施設の開設から間もなく、多くの保護者から今度は入所施設をつくってほしいという声が寄せられました。朝9時から夕方4時までの通所型施設のため、利用者は保護者に自宅から送り迎えしてもらって通います。

「当面はそれでもいい。しかし私たちがいなくなったら子どもはどうなるのか」。それが保護者の共通した悩みでした。

 子どもが安心して暮らせる入所型の施設が欲しい。そこで共同生活を送りながら自立して生きていくことを学ばせ、自分たちが死んだあとは、そこで暮らしていってもらいたい。その安心が欲しい、というのが保護者の気持ちです。それは痛いほどよく分かりました。

 一般に「8050問題」と呼ばれている深刻な社会問題があります。80代の親が50代でなんらかの理由で引きこもってしまった子どもの生活の面倒を見切れなくなり、共倒れになってしまうというケースが数多く報告されるようになり、ますます増えると考えられているのです。知的障がいの子どもをもつ親にとってもこの問題はひとごとではありません。