遠藤 絵を描いていると、人物のデッサンなんかは特にですが、「何か違うな」と思うことはよくありますね。でも何が違うのかは分からなくて、直しても直しても上手くいかず、そういう時はすごく気持ち悪いですね。大抵は「目の位置が1ミリずれている」とか、そういう小さな違和感が積み重なったものだったりしますが。
勝丸さんが舌を巻いた
正確なスパイの描写
勝丸 『SPY×FAMILY』の中で、イーデン校(主人公ロイドの娘であるアーニャが通う名門校)の面接試験を受けに行くときに、主人公のロイドが視線を感じとって、面接が始まる前から試験管に見られていることに気づく場面がありましたね。あれと似たような感覚は私が公安時代にも抱いたことがあるのでよくわかります。一体どうやって思いついたのかなと不思議でした。
遠藤 現実にあの能力あるんですね(笑)!完全に漫画的なハッタリとして描きましたが。
勝丸 スパイやスパイハンターは普段から訓練を受けているからか、誰かに見られると「ゾワッ」とする感覚があります。先輩から言われたのが、その「ゾワッ」を感じたときは原因を徹底的に探れということです。考えて考えて、わからなくてもそう感じたことは気に留めておけと。
遠藤 わからないまま放置して、気持ち悪くならないですか?
勝丸 ずっと意識し続けるわけではなくて、もう一度同じゾワッを感じたときに思い出すものです。なので、歯に物が挟まったような気持ち悪さはありません。次のゾワッが来なければ、自然に忘れていきますからね。
現在、私の本業はセキュリティコンサルタントで、海外に派遣される企業や省庁の方に向けてレクチャーをします。その際によく伝えるのが、毎日家を出るときに視野を広く持ってほしいということです。実際、意識的に視野を広く持とうとするだけで、ゾワッという感覚まではいかなくても、違和感を感じることができるようになってきます。一般の方も同様です。